KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2021年6月号
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沼部 指数関数的にデジタル技術が進歩し、社会のあり方が根本から変わりつつある今。神戸市でもスマートシティ化による経済の活性が期待されています。福岡 自分たちの手で街も社会もほんまに変えていける時代になりましたね。テクノロジーに目がいきがちですが、僕は技術で都市や生活を便利にする前に、「どう生きたいのか」「何がしたいのか」といった本質的な部分が大切だと思います。そこをとことん突き詰めてデザインしていかないと、どこも同じような街になってしまいますからね。沼部 産業や経済のグローバル化が進むなか、「神戸独自のやりたいこと」って見つかりにくいのでは?福岡 今の神戸を生きている人たちがやりたいことをぶつけあい、実験しながらその最大公約数を練り上げていけばいいのではないかな。港と共に歴史を重ねてきた神戸は、これまで貿易ビジネスの勢いが海外交流の刺激を産み、市民の生活文化を創り出してきましたよね。ただこれからは世界的なトレンドをみてもこれが逆転していくと思うんです。都市生活で生まれる欲求や、課題へと向かう市民の熱量、すなわちカルチャーが新たな生業を創り、全体経済すら引っ張っていく。都市型クリエイティブ産業の勢いがある地域には共通項が見える。神戸にもその素地が有るというか起こっているというか。星加 神戸は都市型創造産業支援事業への助成金など、仕事や環境の創出を支援するプラットフォームの構築に取り組んでいます。ただそれに「文化」をどう関係づけるか、ですね。福岡 今の「文化」に必要なのは、アートやエンジニアリングと資本が出会い、触発を起こし合う事だと思います。例えば、アメリカ・ネバダ州の砂漠で実施される「バーニングマン」というアートフェスティバルはその良い例です。ヒッピーでハチャメチャな10日間のために、7万人が集まってくる。FacebookやAirbnbの創業メンバー、Amazonの会長も参加していて、Googleの創業者は「バーニングマンを続けるためにGoogleをやっている」とまで言います。「お金を使うことができない」ルールとカルチャーがベーシックインカム事業を、砂漠の強烈な日光が太陽光発電、電気自動車事業を始めるヒントへとつながっていく。ビジネスの為にやっているわけではないのに、結果新たな生業も生まれていく。沼部 ビジネスありきでなく、やりたい!とか参加したい!から発展していっているところが面白いですね。福岡 例えば、岸和田のだんじり文化は、何が何でも自分たちの文化を守り続けていこうという市民の本気度が感じられます。本気でやりたいことをやろうとする市民で満たされた街が面白くないわけがない。星加 岸和田市民の人生に刷り込まれていますよね(笑)。市民主導です。アツく、誇り高く「やりたい!」を続け神戸のスマート化に大切なものとは?35

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