KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2021年6月号
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それが今年で36作目でしょ。こんな長いシリーズになるとは、宮沢賢治さんもびっくりして生き返っちゃうよね(笑)。―コージさんの考える、この作品の魅力はなんですか。これはね、もう黒澤明の映画作品に匹敵する、宮沢賢治監督の大長編スペクタクルといえる作品。だから絵を描くときも、映画を作っているような感覚でした。この作品には宮沢賢治の戦争観が如実に出ていると感じています。だって、北守将軍は10万人の兵を連れて砂漠まで敵をやっつけに行くんだけど、戦わずして病気で兵を失って9万人の兵を連れて故郷に帰ってくる。はっきりいっちゃうとラブ&ピースの話ですよ。―描かれる前に、コージさんの中でもうイメージが出来上がっていたんですね。乗り移っちゃって、2か月くらいで描いてしまいました。しかもコロナ禍で、飲みに行く誘惑も全くないという、非常にいい環境でしたから(笑)。朝5時から起きて、朝日を浴びながらどんどん描けちゃって。編集者の松田素子さんに「締め切り、まだ一年先ですよ」と驚かれました(笑)。―その後、描かれたのが、『天のすべりだい』の作品群なわけですね。最初は本にするつもりもなくて、天に身を任せて描き続けてたらどんどん描けて…。こんな幸せなことはないです。この画集には、僕の旅で経験したイメージも入っているので、そういう作品にはエピソードも添えています。―コージさんは下描きなしで、「こんな絵を描こう」と考えて描くわけではないんですよね。そう、自動筆記みたい。まあ、下描きしているうちに本番になってしまうというか。まあ、僕にとっては全部が本番なんですね。―旅はお好きですか。好きなんてもんじゃないよ。もうここにいても旅してる感じしてるもん。僕にとっては、うちのドアから一歩出て歩き出すのが全部旅。部屋の中でも旅してる感じです。―素敵な発想です。コロナ禍で、どこにも行けないなんて嘆いていてはだめですね。そうそう。僕なんてここから出ずに、全部この絵が描けたわけですから。いろいろ描き込んでいるので、じぃっと見て、楽しんで、遊んでくれたらいいな。神戸・北野で展覧会が開かれます!●ギャラリー島田(tel:078-262-8058)7月17日〜8月10日(水曜休廊)・『天のすべりだい』 『北守将軍と三人兄弟の医者』原画ほか・会期中:随時 ライブペインティング・7月31日 pm2:00〜 トークショー(要予約)※詳細はギャラリーにお問い合わせください●ラインの館(tel:078-222-3403)7月1日〜7月25日・『コーベッコー』原画 32

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