KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2021年6月号
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クに隠された人々の心の荒みを感じながら撮影していた」と明かす。新作へは、そんな息苦しい社会に押しつぶされないための勇気、希望が描かれている。「苦しいコロナ禍の中でこそ見てほしい」という思いはそこにある。テーマは家族。原案、脚本は石井監督のオリジナルだ。「これまで抱いていた家族像というものをすべて取っ払って見てほしい。これからの家族と新作の小説や映画に新譜…。これら創作物が、漫然とこの世に生まれることはない。いずれも創作者たちが大切に温め蓄えてきたアイデアや知識を駆使し、紡ぎ出された想像力の結晶だ。「新たな物語が始まる瞬間を見てみたい」。そんな好奇心の赴くままに創作秘話を聞きにゆこう。第10回は石井裕也監督。今だからこそ見てほしい…新作に込めた新しい家族像THESTORYBEGINS-vol.10監督石井 裕也さん⊘ 物語が始まる ⊘てから8年…。日本の鬼才が満を持して世界へ進出した。その記念すべき第1弾は、韓国でオールロケを敢行した「アジアの天使」。7月2日から全国で一斉に封切られる。この日本公開に先駆けて3月、大阪市で開催された、アジアの新作映画が一堂に集う「大阪アジアン映画祭」のクロージング作品に選ばれ、世界初上映でお披露目された。コロナ禍の中で、この映画を完成させた石井監督は、「マス息苦しい世の中にふさわしい映画を…「今は不自由で息苦しい世の中ですが…」と語った後、少し語気を強めてこう続けた。「そういう時代にふさわしい作品が出来たと自負しています」2013年。映画「舟を編む」で、日本アカデミー賞の最優秀作品賞、最優秀監督賞など主要賞を独占して受賞、30歳にして日本映画界を席捲し22

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