KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2021年6月号
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は近々空室になる山手通の近くのビルがありますけど、一度見てみてはどうですか。まあ、こういう話は横尾さんと直接するんではなく、誰かいませんか」「知事さんを紹介してくれた元兵庫県立美術館の山崎さんがいいです」「ほな、山崎君と話すわ」六甲山頂は美術館としては不便、東灘のレンガ倉庫は美術館としてはいいけれど、ここも場所が悪い。山手通のビルは場所はいいけれど美術館がビルというのは画廊レベルのような気がするという理由で、この三つの候補は適さないように思った。他にもっといい建物はないか、と山崎さんを通して知事さんとコンタクトを取ってもらった。神戸で始まって 神戸で終る ⑰に連絡をしてくれて、知事さんとは車の中から電話を頂いて話が出来た。「どういうことですか、何だったら芸術課の者を出席させて、お話をお聞きしましょう」ということになって、早速、芸術課の人達同席で、知事室にて井戸知事さんに直接面会することになった。「倉庫もいいけれど、そんなんやったら、直接美術館を作ってしまえば作品は収納できますで」エッ、まさか、倉庫案がいきなり美術館案に発展するとは、僕としては考えられない話で、リアリティがない。「使用できそうな建物は、六甲山頂の牧場のある所と、東灘の海岸に面したレンガ造りの倉庫、それに、もうひとつ作品がどんどん増える一方で必要なのは、その作品を収蔵する倉庫である。東京の倉庫は結構高いので、もしかしたら神戸の方が安い倉庫があるのでは? とある日、神戸に行った時、兵庫県立近代美術館での個展のキュレーションをしてくれた山崎均さんに相談した。すると、「もしかしたら県所有の空いている建物があるかも知れない」と言った。「では誰に聞けばいいの?」と尋ねると「井戸知事さんに相談してみたら?」と彼は言う。まさか知事さんにこんな個人的な相談は出来ない、だけど当たって砕けろという故事もある。井戸知事さんとは、何かの受賞式で面識がある。思い切って電話をしてみた。その時は不在だったが、秘書の方が知事さんTadanori Yokoo美術家横尾 忠則撮影 筆者18

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