KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2021年5月号
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ていました。風が強く湖も凍てつく寒い北の大地の風景の中で受賞を知り、背筋が伸びる思いでしたね。受賞作は最初の写真集ですし、自分としてはまだまだ新人の気持ち。「これぞオオカミのポートレート」という写真がまだ撮れていないし、土門拳賞なんて候補に挙がるとしても何十年も先だと思っていたので、今後がとても大事だなと。─土門拳氏は写真もさることながら名文家でもあったのですが、文章も選考対象なのですか。大竹 基本は写真作品を対象としているのですが、選考委員に必ず1人は作家が入り、文章と写真との関係は必ず議論に上がるそうです。ただ、土門拳賞には写真だけの力で評価すべきという意見もあり、一理あると思います。凄い写真はキャプションがなくても、1枚の力でアッと言葉を失ってしまうものです。僕もそれを目指し、写真の力を高めたいという思いはいつも持っています。─土門拳氏の作品をどのように見ていますか。大竹 写真1枚に込められた鬼気迫る集中力、シャッターをどこで切るのか、何を撮るのかという観察力、一瞬を逃さないよう研ぎ澄まされた感覚など、撮るまでのプロセスがあるからこそ、力強いのではないのかなと思います。撮る前後に考えたことを含めて、写真に全部写るのでしょうね。─受賞記念の特別展が開催されるそうですが。大竹 4月27日~5月10日に東京、5月27日~6月9日に大阪のニコンプラザで開催します。その後、10月6日から12月22日までは山形県酒田市の土門拳記念館です。撮る時にもプリントの大きさを考えているので、ぜひ現場で体験していただきたいなと。動物や風景の写真36

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