KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2021年4月号
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驚くことは、世界と出会いなおすこと。─まど・みちおさんの画集なども手掛けられていますね。私が編集者として関わったのは晩年の10年間ですが、本当にかけがえのない出会いでした。まどさんは100歳を過ぎても「びっくりしたなぁ」「知らんかったなぁ」「ありがたいなぁ」という言葉が口癖でした。「あたりまえのものにも驚き続ける力」を持っておられた方でした。紅葉した葉っぱをお見せした時のこと。「この葉っぱには、こうなる理由があったんですね」とおっしゃった。驚いたのは、まず「この」が付いていたこと。そして「こうなる理由があった」という言葉。外でもない「この」葉っぱが、芽吹いて今に至るまでの「すべての時間」のことを、まどさんはおっしゃったんです。驚いて黙っている私に、まどさんは続けてこう呟かれました。「その理由を見つけたくて書くのが、詩なんです」と。──この言葉を、私は一生忘れないと思います。まどさんは、いわば宇宙の設計図を読み続けた人だと思います。そこにあるものがなぜそこにあるのか、私はなぜここにいるのか、そういうことを様々な角度から、子どもたちが分かる言葉で書き続けた。あらゆることのつながりを考え続けた方でした。まどさんとの最後の仕事は、『まどさんからの手紙 こどもたちへ』(講談社)でした。この本は、まどさんが母校の子どもたちに送った手紙をもとに作った本です。ここには、大人からの「上から目線」は全くありません。子どもたちの力を信じた真っ直ぐな手紙です。君たちがそうしてくれることを、地球が、宇宙が願っています、とまで書いてあります。この本が出来上がって、手紙を保管していた学校の子どもたちに会いに行った時、帰りがけに男の子たちがやってきてこう言ったんです。「ぼくたち、期待されているんですね。まかせてください!」って(笑)。子どもからこういう言葉を引き出せるなんてすごいです。果たして私は、そんな大人だろうか、そこがものすごく問われている時代だと思います。子どもという読者へ本気の球を投げる。─自然に驚き続ける力や存在の「つながり」など、松田さんご自身の作品にも、まどさんの想いが生き続けている気がします。『ヤモリの指から不思議なテープ』や『ホネホネたんけんたい』(以上アリス館)など、自分で企画し、文章も書いたものは『雨ニモマケズ』宮沢賢治/作 柚木沙弥郎/絵 ミキハウス 2016年詩人で知られるまどさんは画家でもあった。まどさんの初の画集。『まど・みちお画集 とおいところ』新潮社 2003年37

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