KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2021年3月号
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います。野菜を買う際、何回かに一回有機野菜を選択するだけでもいい。できることから持続への価値観を育てていくことが大事だと思います。木野内 海外のローカルでチョコレートづくりに励んでいる人も「自然エネルギーを使っています」という人が多いですよ。でもそれを主張するでも押し付けるでもなく、ナチュラルにさらっと実践している。「私はこう生きる」という一つの選択肢であり、その人の生き様なんですね。今、世界のショコラティエは、ストレスの多い都心から蜘蛛の子を散らしたかのようにローカルに移り住むようになりました。ローカルでも材料は手に入るし、通販で売ることもできるからです。それならば自分や家族の幸せを一番に考えて生きていこうと。世界共通で同じ状況に陥ったことで、自分の生活を見つめ直し、自分と自分に近い大切な人の幸せを優先する、そんな流れが世界的に来ているように感じます。福井 確かに、選択の基準が「自分が心地いいか、自分が幸せかどうか」に寄ってきた気がします。心地良さや幸せは人それぞれ違うから、それぞれが選んでいけばいいと思いますね。白黒はっきりさせるのではなく、「ま、いっか!」という、おおらかさをもって暮らしていくことも長く続けていくコツだと思います。 三好 ぼんやりしていたことが、時間ができたことで浮彫りになった、なんてことはありませんか。私は自分の仕事について見つめ直す機会となり、私の居場所はここだ、と改めて思いました。直営カフェレストラン「78Fuzuki Yaoka」をオープンしたのですが、料理教室やケータリングのお客様とはまた違う方たちとの出会いが、とても楽しいんです。お店を持つことで「美味しい」と言ってもらえる幸せに気づき、自分の好きなこと、やりたいこと、そしてできることが、よりくっきりと見えてきました。推奨してきた有機食材を、目の前でより多くの方に召し上がっていただけるようになったこともプラスの変化です。福井 オーガニックもSDGsが追い風となって注目度が上がってきていますし、これまでなかなかお話できなかった方とオンラインを通してつながる体制も整ってきました。時間ができたので考える余裕ができ、「オーガニックは持続可能な社会のために必要な生き方」という自分の考え方は間違っていない、と、自分の仕事の価値が再確認できてよかったと思います。木野内 私も新しい体験って大事!と感じる毎日を過ごしています。実はフェリシモが社屋を引っ越しして、チョコレートミュージアムを作っているんです。今秋のオープンに向け、現在準備中です。チョコレートをテーマにしたアート作品や、何万個という皆の思い出が詰まったパッケージの展示など、チョコレートの可能性を拓き、神戸から新しい歴史をつくっていけるような新しいカタチのミュージアムをめざしています。臨床美術のワークショップで、神戸に訪れた人たちと絵を描くこともやってみたいし、幸初心に帰る。そして確信する38

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