KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2021年3月号
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なり、一段と忙しくなった農家さんの出荷のヘルプをしたり、経営のことや新商品の相談にのったりして、そのお礼に野菜や卵、お米、日本酒などをいただくんです。食べ切れない分を人にお裾分けするとまた違うものをいただいて…と物々交換する農的な暮らしを満喫しています。野菜を育てたり、庭の井戸水を汲んだり、オフグリッドを採用し、電気もつくっています。といっても、スタイルは神戸で暮らしていたときと全く変わらないですよ。トイレはウォシュレットだし、お風呂も自動お湯張り機能付き。背景がオフグリッドというだけです。ただ残念ながらそれらの再エネ技術はすべて海外製で、日本はまだその分野に関しては遅れをとっている感が否めないですね。三好 フランスでは、私が暮らしていた頃にはすでにオーガニックを意味する「Bio」という商品が暮らしのなかに溶け込んでいました。欧州は石畳の街並みなど旧きよきものを残しつつ、最先端のテクノロジーや考え方も取り入れて、バランスがとれている。日本でもオーガニックな考そんな交流ができています。想いの強さや熱意が、そのアクションを起こしているんです。三好 それって作り手に、本当の美味しさや本当のオーガニックに対する想いがあるからこそでしょうね。人と会わないことや、現地に行かなくなった代わりに、数字などでは表せない、もっと本質の部分にスポットが当てられ、商品を求める側の感性も敏感になっているように思います。  三好 「オーガニックは生き方」とおっしゃっている福井さんですが、昨年、神戸市から念願の丹波市に引越しされましたね。新しい暮らしはどうですか。福井 丹波には毎月のように通っていたのですが、通うのと住むのではやはり全然違いますね。地元の採れたて有機野菜をたっぷり食べる食生活になったからか、体が軽くなりました(笑)。コロナの影響による業態の変化で、中間業者さんも有機野菜を取り扱う新事業をつくるようにえ方が浸透してきたものの、プラスチックごみを出さないことがSDGsと端的に捉える人もいて。それはそれで間違ってはいないものの、ちょっとまだ感覚がズレていたり、偏ったりしている気がします。福井 ヨーロッパの人たちは自分達の子どもや孫の世代に残したい持続可能な豊かな暮らしは何だろうと考え、暮らしを取捨選択していますね。持続可能な観点から話しあって、同じ価値観でつながっていく。共有された価値観が世代を超えて子どもたちに受け継がれていけば、その価値観の持続可能性は高まります。だからSDGsもシンプルに自分がずっと楽しみたい暮らしについて考えみるとわかりやすいですよ。 有機野菜は美味しいから、一生食べ続けたい。ならば有機農家さんに作り続けてもらわないといけない、そのためにどうすればいいのか。そこに排除される人やモノ、仕組があると持続可能ではないんです。有機野菜は美味しいけれど高い、と排除してしまうと、もうそこで終ってしまやり続けたいことを自分で考えて選択37

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