KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2021年3月号
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ディラに送った手紙が一冊の本になっているもので、その中で印象深かったのが日本の歴史について書かれている部分です。教科書で習った内容とはかなり違って、「他の国の人から見たらこんなに違うんだ」と思ったことを鮮明に記憶しています。安藤 私は大阪の下町で育ったのですが、家の隣がたまたま貸本屋で、よく手塚治虫さんの『鉄腕アトム』や『ジャングル大帝』を借りて読みました。漫画でも手塚さんの描く空想の世界は、十二分に子どもの想像力を鍛えてくれました。伝記もよく読みましたね。偉人達それぞれの考え方が伝わって、刺激になりました。館内でも、外の芝生広場でも、自由に本を読める図書館―「こども本の森 神戸」はどんな図書館になるのか楽しみです。久元 図書館の多くが受験勉強をするための自習室のようになっています。それも一つの形としていいのですが、「こども本の森 神戸」は館内で本を自由に読み、外に持ち出して東遊園地の芝生で陽射しを受けながら読むこともできる、そんな図書館にしたいと思っています。安藤 神戸市民みんなが自分の子どものように育てていく図書館。館内に置く本も市民の皆さんから寄付を頂き、自分たちの図書館として育てていただく。大きすぎる都市ではできません、ちょうどいいサイズの都市・神戸だからできることです。―具体的な計画はありますか。安藤 ノーベル賞受賞者の山中伸弥先生、野依良治先生、そのほかにもアルピニストの野口健さん、もと宇宙飛行士の毛利衛さんなどから、御自身が子どものころに読んだ本を提供いただき、子どもたちに見てもらえるコーナーを作る予定です。この図書館が本に一歩でも近づくきっかけになるといいですね。久元 子どもたちには最初だけでなく、続けて来てもらわなくてはいけません。そのためにはいい本がたくさんあることが条件ですから、安藤先生から素晴らしい本を提供いただき感謝しています。また、市民の皆さんからのご寄付を活用して子どもたちにぜひ読んでもらいたい本をそろえていこうと計画しています。もう一つは、神戸のことを学べるコーナーを作ることです。神戸は昭和20年の空襲で焼け野原になりそこからよみがえり、そして震災から復興してきました。試練を乗り越えてきた歴史や思いが子どもたちにしっかりと伝えられるようなコーナーです。バラエティーに富んだ図書館を市民の皆さんと協力しながら作り上げていきたいですね。安藤 ヴォーリズが山の斜面地にたくさんの西洋館を造り、それが日本の住宅の原型になりました。西洋の発祥の地という歴史的な側面を見ていると、神戸は生活文化レベルが圧倒的に高いまちだと思います。ぜひ、このまちの歴史を知るコーナーを充実させてほしいと私も思います。久元 はい。小学校では神戸の歴史を学ぶ授業の副読本KOBECCO安藤忠雄×久元喜造対 談 202126

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