KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2021年1月号
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両方を狙ったら、減点法になる、それはダメだと思ったんです。例えば、持ち点100としたら、どう頑張っても育児とキャリア形成、常に50点ずつしか取れない。ただでさえ父子家庭で自分のパフォーマンスを150%くらい上げなきゃいけないときに、自己評価が下がる方法は絶対ダメです。なんとかして自己肯定感を上げなきゃいけないわけだから。「えらいことになったぞ!」と思ったときに乗り切る方法は、ぼく分かるんです。−どうするんですか。とにかく〝上機嫌〟になるんです。つらそうな顔でやっても持たないですから。そして、自分への期待度を一気に下げるんです。子どもに三食きちんと食べさせて、清潔な服を着せて、乾いた布団に寝かせたら、「はい!今日の俺、100点!」ということにする(笑)。そうすると随分楽だし、その方が結果的に仕事もできる。だから、育児には−お父さんと暮らすことは、るんさんが決められたそうですね。びっくりでした。ぼくを選ぶことは絶対にないと思っていたので。毎日のように、この子と離れたらどうやってその心の風穴に耐えられるかばかりを考えていましたから。でもそれからは、「さあ、大変なことになるぞ」と腹をくくって、一気に頭を切り替えました。仕事で出世とか成功することは求めないと決めたんです。−女性でもその覚悟を持つことは難しいように思います。突如、シングルファーザーに。「えらいことになったぞ!」−在宅勤務の増加で、子どもと改めて向き合うことになったお父さんが多いようです。 内田さんが子育てされていたころは、父子家庭は珍しかったのではないでしょうか。89年頃ですから、周りにはいなかったですね。でも、二人で暮らし始める前から子育てには深く関わっていたんです。保育園の送迎とか、イベントにもフル参加だったし。卒園式の謝辞までやって、「父親が保護者代表なんて園始まって以来だ」って言われたくらい(笑)。 街場の親子論―父と娘の困難なものがたり(中公新書ラクレ)27

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