KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2020年12月号
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…まずは『絢爛亭』の歴史から教えていただけますか。『絢爛亭』は1983年、花隈のお茶屋さんだった空間を活かした料亭としてスタートしました。1日1組、完全クローズのおもてなしが時代的に珍しかったこともあり、政財界や文化関係の方々に御贔屓にしていただきました。私はサービス係で板前兼女将を務めていた母は料亭を営みながら同時に料理教室もしていて、大丸神戸店のくじゃくサロンのお料理教室も任されるようになりました。震災後もしばらくは花隈でお店を続けていたものの、花隈という地域の時代性や建物の造りの不便さなどもあり、思い切って北野に移転し、新たにレストランと料理サロンを始めました。母がこの業界に足を踏み入れたのは、母の父、私の祖父が元町でクラシック音楽を聴かせるサロン「vienna」を営んでいた影響もあるのかもしれません。祖父は戦後の焼け野原のなか高額な蓄音機を購入し、皆に音楽を聴いて心豊かになってもらいたいという思いでサロンを始めたとか。私は特にこれといった目標もありませんでしたが、「裕子はサービス業向き」と言う母の41

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