KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2020年11月号
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されているかを知っている人はどれほどいるだろうか?映画化の企画が上がったのは今から約3年前。「クロマグロの完全養殖の成功には、32年もかかっているが苦労話の再現ドラマではなく、今、研究している大学生の視点で、青春ドラマにできないか」と製作陣と検討。学生が研究合宿をしている和歌山県の水産研究所に赴き、学生・教授に取材し、脚本の構想を膨らませていった。若手実力派女優、小芝風花演じる大学生、美波の視点から、研究の難しさと同時に、その尊さを浮き彫りにしていく。「養殖マグロを健康に育てるために、稚魚の〝エサのエサ〟から育てるなど、取材すればするほど養殖は奥深く興味の尽きない世界であることが分かりました。これはきっと面白い世界が描ける…」と確信したという。原点は働く〝OL監督〟の視点自分が知らない世界に魅せられ、その魅力を人間ドラマに織り込むために映画化する―。このスタイルは監督デビューの頃から変わっていない。奈良県で生まれ育ち、県立奈良高校では映画研究部に所属。映画にのめりこむきっかけは森田芳光監督の映画「家族ゲーム」だった。「中流家庭に松田優作演じる家庭教師がやって来る。ごく日常的な設定なのに、とても面白い。壮大なテーマでなくても映画は撮れるのか!」と感銘を受け、映画作りに興味を持った。神戸大学に進学すると映画サークルに入り、自主製作で8ミリ映画を撮り始める。「複数の部員が入居していた古いアパート『福寿荘』に、サークルの機材部屋もあったので、行けば部員がいる、いつでも編集作業ができる、という有難い環境でした」と振り返る。大学卒業後は松下電器産業(現パナソニック)に就職。一方で、自主製作映画を撮り続け、全国の映画祭に作品を応募。〝コンテスト荒らしのOL 監督〟の名は映像業界で知れ渡るようになる。仕事との両立が難しくなり、9年半で退社し、監督・脚本業を始めた。2006年、沢田研二、上野樹里をキャストに配した「幸しあわせ福のスイッチ」で、劇場映画監督としてデビューを飾った。和歌山県の田舎町の小さな電器店が舞台。沢田演じる店主とその娘、上野の親子愛と奮闘を描いた。「切れた電球を替えたり、「TUNAガール」より。小芝風花さん、藤田富さん3838

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