KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2020年6月号
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新緑眩しいカラマツの森。ぬかるんだ地面にブラインド新緑眩しいカラマツの森。ぬかるんだ地面にブラインド新緑眩しいカラマツの森。ぬかるんだ地面にブラインド用の足場を組み、カラフトフクロウの営巣を観察していた。用の足場を組み、カラフトフクロウの営巣を観察していた。しばらくすると、急に巣のヒナたちが騒がしくなった。父親が、狩りから戻ってきたに違いない。母鳥はオスの姿を見つけて巣を離れ、獲物のハタネズミを受け取るとすぐに、ヒナたちのもとへ舞い戻った。その時すでにオスの姿は見えなかった。育ち盛りのヒナたちの食欲を満たすため、早くも次の獲物を探しに行ったのだろう。ノースウッズのフクロウには、獲物の多様性によってジェネラリストとスペシャリストが存在する。つまり、いろんな獲物を食べる種と、ほぼ同じ獲物ばかりを食べる種だ。例えばジェネラリストの代表格であるアメリカワシミミズクは、ネズミ以外にカエル、カモ、ウサギ、ハトなどを捕まえ、性格も大胆で、人里や道路脇の雑木林でも営巣する。また、日本のフクロウによく似たアメリカフクロウもジェネラリストで、小動物の他に昆虫やカエル、小鳥などを食べるが、巣には樹洞を必要とするため、シラカバやアスペンといった広葉樹の古い木が残る森で子育てをする。一方、スペシャリスト代表のカラフトフクロウは、獲物の9割がハタネズミ。そのハタネズミが、明るく湿った地面を好むため、落葉針葉樹のカラマツ林で営巣することが多い。フクロウたちの棲み分けを理解できるようになると、それまで同じように見えていた森にも違いがあることに気づく。知識や学問のシンボルとされるフクロウだが、フクロウについて学ぶことが、森を深く知ることに通じるのだ。フクロウに学ぶノースウッズに魅せられてせられてせられて写真家写真家 大竹英洋英洋英洋Vol.Vol.Vol.111111写真家大竹英洋(神戸市在住)北米の湖水地方「ノースウッズ」をフィールドに、人と自然とのつながりを撮影。主な写真絵本に『ノースウッズの森で』(福音館書店)。『そして、ぼくは旅に出た。』(あすなろ書房)で梅棹忠夫山と探検文学賞受賞。2020年2月、これまでの撮影20年の集大成となる写真集『ノースウッズ 生命を与える大地』(クレヴィス)を刊行した。10

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