KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2020年5月号
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今、神戸の街を舞台にした、一本の映画が公開されている。SFXを駆使した、その映画「漂流教室」を監督したのが大林宣彦監督。尾道を舞台にした「時をかける少女」「転校生」「さびしんぼう」の、俗に言う“尾道3部作”を筆頭に、今、若者にもっとも支持されている監督である。―楳図かずお氏の描かれた原作では、舞台は東京だと思うんですが、それを何故、敢えて神戸にされたのでしょうか。原作はもう15年も前に描かれたものですが、それを15年後に映画化するわけですから、単に原作を映画化するだけではなく、どう原作と再び出会うかということがあるわけですね。原作は漫画で“絵”なわけですから、絵をなぞると、一番、似てあらざるものになってしまうわけです。楳図さんが何故、ああいう追悼 大林宣彦監督恐い絵で恐い漫画を描かれるかというと、自分がお持ちになっているテーマを、どう面白く簡単に伝えるかという漫画的手段として、ああいう絵が存在するわけですよね。しからば、そのテーマは何であるかというと、「子供達は地球の未来に蒔かれた種である」と。一言でいえば、そうなると思うんですね。つまりタイムスリップ物ではあるけれども、決して現在に帰って来ない話で。帰って来ないということは、つまり、我々にとっては未来だけれども、子供達にとっては、そここそが今日なんだ。そういう意味で、未来に住みついた子供達の、今日を自分達で創る物語であると。そうなりますと、そのテーマを映画で描くとすれば、当然、映画の持っている魅力で描かなくてはいけない。そして、地球的規模の話であるとすると、もう日本人の子供達だけではない。つまりあらゆる民族の子供達だろう。そういうことから、インターナショナルスクールという設定がな大林 宣彦 さん (映画監督)珈琲飲みながら……神戸の海に活字が浮かぶ40

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