KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2020年5月号
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水面に差し込んだパドルを引き寄せ、体の脇から後方水面に差し込んだパドルを引き寄せ、体の脇から後方水面に差し込んだパドルを引き寄せ、体の脇から後方へと押し出す。両腕に重みを感じると、キャンプ道具とぼへと押し出す。両腕に重みを感じると、キャンプ道具とぼくを載せた小さな舟は、音もなくすーっと前に進んでゆく。この静かな旅立ちの瞬間こそが、カヌーで旅する時の一番の醍醐味かもしれない。北米ノースウッズで生まれたカナディアン・カヌー。今でこそ化学繊維、アルミ、キャンバスと素材は多様だが、元々は先住民たちが森に生える木、つまり、軽くて水に強い針葉樹の骨組みに、シラカバの樹皮を張り巡らせて作っていた。水上の移動手段としてはもちろん「水に浮く」ことが欠かせない機能だが、それと同じくらい重要なのが「一人で担いで運べる」ような形と重さになっていること。日本の山がちな地形とは異なり、無数の湖が点在する平坦なノースウッズでは、隣接する湖との間隔が近く、昔から人が歩いてできた踏み跡の上を、カヌーも荷物も肩に担いで運ぶことで、何日も旅を続けることができるのだ。覆いのないオープンデッキで荷物の積み下ろしが楽なことも、この独特な旅のスタイルでは大きな利点となる。カヌーに備え付けのシートに座ると、湖面は手が届くほどに近い。風を頬に感じながら、手漕ぎならではのゆっくりとしたスピードで、気になる入り江や島の周りを探検する…やはりその土地で生まれた道具を使えば、その自然をより深く知ることができるのだろう。さて、今日はどこにテントを張ろうか。一夜を過ごす場所を選ぶときほど、旅の自由を感じることはない。自由な旅ノースウッズに魅せられてせられてせられて写真家写真家 大竹英洋英洋英洋Vol.Vol.Vol.101010たくさんのふしぎ傑作集『春をさがしてカヌーの旅』厳しい冬が終わり、湖の氷がとけたばかりの森へ旅に出かけます。釣りをしたり、鳥の巣に出会ったり、発見と驚きに満ちた3週間の旅の記録。大竹 英洋 文・写真福音館書店刊1,300円+税18

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