KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2020年4月号
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効率だけを追求していたら、神戸でパン屋は生き残れない―井筒さんは二代目なのですね。74年前、父が始めたベーカリーを、次男の私が継ぎました。右から左へ物を動かすのではなく、自分の技術を使って商品の価値を高め、お客さんに喜んでもらう仕事がしたかったので性分に合っていたのでしょうね。中学生のころには毎日、店を手伝っていました。楽しかったですよ。―ずっとイスズベーカリーで修業を?ほかのパン屋さんに修行に出たことはなくて、唯一行ったのはフランスです。26才のころだったかな。三つ星レストランにパンを納めているベーカリーでした。まだ日本にはフランスパン専用粉などなくて、クロワッサンも珍しかったころです。行ってみると作り方も全く違う美味しいパンでしたね。言葉も分からなくて苦労しましたが、いい体験ができたと思っています。―井筒さんは神戸マイスターに認定されていますね。神戸は重厚長大な産業が主な都市でしたが、魅力をより高めるために職人が作っているものを紹介しようという意図で始められたようです。そこで私にも声がかかり平成10年に認定されました。パンやケーキの職人、料理屋さんなど食の関係だけではなくて、美容師さん、写真家さんなどいろいろな業種の方がおられます。私は中学校で、ものづくりについての講話をしています。―話を聞いた中学生がパン職人を目指してくれるといいですね。そうですね。年々、パンづくりを学ぼうという人が減ってきています。美味しいパンを作るためには朝早くから始めなくてはいけませんから、それがネックなのでしょうか。うちも午前3時から生地づくりを始め、全て手で分割し成型し25

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