KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2020年2月号
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マ・オートモーティブのシャシーにマツダが提供したロータリーエンジンを搭載したものでした。ル・マンの知識といえば、ただスティーブ・マックイーン主演の映画『栄光のル・マン』(1971年)だけで、ただ「ル・マンに出たい」という気持ちだけでしたね。子どもたちにプレゼントするル・マン体験―東日本大震災で被災した子どもたちの支援をされているとうかがいました。震災があった翌年から、SOK(サポート・アワー・キッズ)というNPOを私の盟友だった秋沢さんが立ち上げて、被災した児童の自立支援活動をおこなっています。ぼくがやっているのは、毎年、ル・マンを中心として、10名の子どもたちをフランスに連れて行くプログラムです。子どもたちに車の魅力とはどんなものかを教えたいというのと、ル・マンの自動車レースを通してチームワークの大切さを伝えたいと思っているんです。10名の子どもたちは東北の学校を通じて募集され、彼らの旅行費用はすべてマツダ本社が負担します。ル・マンの時期は6月で、授業も休まなくてはいけませんから学校側の協力も必要です。この活動も、今年で10年になりますが、ぼくは続けたいと思っています。子どもたちの中には、震災で親や家族を失った子どももいます。それは本当に不幸な、他の人たちが体験したことのない辛いことだけれども、いつまでも後ろ向きに考えずに、それをバネにして強くなっていかなくてはいけないと思うんです。またそれを強さに変えるきっかけになってほしいと思うし、幸い、子どもたちはみんなそういう方向に向かうことができています。プログラムでは、子どもたちの被災体験をフランスの小中学校で発表する場も設けられているんですが、聞いたら涙が出てくるような悲惨な体験の話もたくさんありました。どうやったらこの子たちが自信を持った大人になってくれるかと考えたら、海外に連れて行くこのプログラムしかないと思った。自分が生まれた東北の町しか知らなかった子どもが、フランスに行っ使って早く走るレーサーが必要だったというわけですね。そこからマツダとのつきあいが始まりました。最初にル・マンに挑戦したのは1974年です。レーシングカーはプロトタイプのもので、シグロード・トゥー・ル・マン LMP-338

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