KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2020年2月号
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南西200キロの、なんの基幹産業もない、人口18万人ぐらいの小さな町なんですが、それが一年に一回、6月のレースの時期には35万人ぐらいの観客が訪れる。インバウンドとしての効果は町には大いにあるわけですね。―そんな小さな町で自動車レースが行われるようになったのは?1923年に初の24時間レースが行われましたが、もともと、町の熱心な自動車好きのお金持ちが集まって始めたレースだそうです。さかのぼれば、なぜ自動車レースやスポーツが人気なのかといえば、人間が本来持ち合わせている闘争心からです。人間はそういう闘争心というのを無くしてはいけません。むやみに戦うのは良くないですが、きちんとしたルールのもとで競い合うことで、人間としての強さも生まれます。大昔は稲作ができないときは、男性が狩猟に出掛けたわけですが、動物を狩るのに罠をしかけたり、石を投げたり矢を放ったり、そしてより早く走ろうとするようになる。それは人間の闘争本能であり、種の保存のためです。そのうちに人間は馬を走らせるようになる。すると馬を持っている人は、自分の馬とあなたの馬と、どちらが一番あの丘の上まで一番速く走れるかと、自然発生的に競うようになる。それが、自動車に替わって、どれほど早く走ることができるか競ったのが今のF1であり、もうひとつが、どれほど長く走れるか、これがル・マンのような耐久レースになっていったといわれています。ただ興業的に見ておもしろいとかいうだけではなく、きちんとしたルーツのもとに自動車レースはあるわけです。―過酷なレースに29回も挑戦してきた理由は。特にル・マンに関しては、レースが難しいんです。だから、その難しいレースへの挑戦心でしょうね。ぼくは経験がないけど、難しい山に登る、危険な山に挑戦するアルピニストの方々の気持ちに通じるかもしれません。ル・マンは一年に一回しか開催されませんから、29回といえば29年ですよね、長いよね(笑)。実際には30回挑戦人間の闘争心が自動車レースのルーツ―ル・マン24時間レースとは。自動車の「24時間レース」は、24時間内での、サーキット周回数を競う競技です。世界三大24時間レースというのがあって、その頂点がル・マン。あとは、アメリカ・フロリダ州のデイトナ、ベルギーのスパ・フランコルシャンで行われるレースがあり、世界各国の自動車メーカーが社の威信をかけて、これらを制したいと思うレースです。ぼくはたまたま長距離が得意だったから、この世界三大24時間レースを日本人で初めて完走しました。大昔ですけどね。―コースにはそれぞれどんな特徴が?全部サーキットですので、アスファルトの舗装路ですからダートはありません。ただ、ル・マンのサーキットというのは一般公道を使います。一周13.6キロのうち、3分の2は一般公道ですから、公道を閉鎖してまでレースができるお国柄ということでしょうか。ル・マンというのはパリから33

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