KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2020年2月号
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にね。でも、どこかに好きになった人がいる、と心の中だけでも“おもう”ってことは大切だと思います。誰かを「いいな」と思うこともね。人を好きになることは、いろいろな感情の揺れがありますから、そういう経験はぜひしてほしいですね。―『ハートカクテル』は、1980年代バブル期の、エネルギッシュな時代にヒットしました。みんなアクティブでしたよね。羊の皮をかぶった狼だったのかもしれないですが…(笑)その狼も大きな夢を持っていた。その先にある、かなうかな、どうかなというぐらいの大きな夢。物質的なことでなく、心が豊かになった時代だと思います。その後の偏差値教育が、限られた人間にしてしまったのかもしれないですね。80年代も偏差値はあったけど、「オレはちがう」という思いを持っていたでしょう。―作品には、音楽が流れている気がします。いつも音楽、ピアノの音を聴きながら描いています。ぼくの作品がテレビアニメになったときに、一作ごとにサウンドラックが作られたんです(1986年~1988年)。三枝成章さん、松岡直也さんら4人の作曲家さんによるもので、ぼくの作品をご覧になって、ストーリーを込めて作られた音楽でした。ぼくは今、逆に、そのアルバムを聴きながら描いています。というのは、ストーリーがある音楽というのは、また新しい作品を作り出すということなんでしょうね。時が流れても、同じメロディが新しいストーリーを生みだしてくれているんです。世界各地の絵を描いていきたい―わたせさんは現在74歳ということですが、とてもお若くていらっしゃって、秘訣は何ですか。絵を描いたりすることで、若い方と仕事をすることが多29

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