KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2020年1月号
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るんですよね。ぼくの絵の中に飛行機が出てくるけれども、あれはぼくの少年時代の戦争体験です。ぼくは戦争に行ったわけでも空襲に遭ったわけでもないけど、その時代の恐怖というのが戦争だった。ぼくに限らず、あの時代を生きた子どもから老人まで、みんな、戦争を受け入れる人なんていないですよ。―読者の方には、作品のどこを楽しんでほしいですか。そこに描かれているものに、あまり意味を求めない方がいいですね。例えば筆のタッチ、動き、絵具の盛り上がり、そういうものを見てもらう。これは何を描いているかとか、何を意味しているかとかいうのは、あまり知的に考えない方がいいですよ。今は、なんでも知的に見て、それを自分の教養にしようとかね、そういう考えも、つまり欲望なんですよね。だから小さな子どもが見て感じるようにね、胸襟を開いてすべて受け入れるっていう、そういう姿勢で作品の前に立ってもらえばいいんです。作品の空気や風を感じてもらえばいい。そうすると、自分が作品の中に入らなくても、自分の中に作品が入ってきてくれると思います。もしそこで何か発見があれば、自己を変革することになる。「発見」というのは、「発明」とはちがって、そこにすでにあったものを、自分が見つけ出すこと。それは、その人がその瞬間に自分を変革して、一歩前進するきっかけにもなることなんです。横尾忠則現代美術館(兵庫県立美術館王子分館)神戸市灘区原田通3-8-30TEL.078-855-560710:00~18:00/展覧会開催中の金・土曜日は~20:00 月曜日休館(祝日、振替休日の場合は翌日)、年末年始、メンテナンス休館(不定期)絵の資料のため、アメリカのアンティークショップで「世界の滝のポストカードを集めて送ってほしい」と注文したところ、以来数年にわたり滝のポストカードがつまったボックスが送られてきた(値段は毎回約20万円)。「最近送付がなくなったので滝が全部集まったのかなと思ったんだけど、お店のおばあさんが亡くなったみたい」と、横尾さん。それが作品になっている33

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