KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2019年12月号
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イアントの心づもりは、前面の平らに造成された部分にありましたが、談判の上、背後の60度の斜面に建つ集合住宅を設計しました。単純な住戸ブロックを、自然の地形に落とし込むと、必然的にズレや隙間が生じます。それらを空間の“ふくらみ”として生かすことで、一つの建物としてのまとまりをもちながら、それぞれに間取りが異なる集合住宅にしようと考えました。それで構造、法規を何とかクリアした後、最大の難所は、やはり工事のプロセスでした。「下手すれば土砂崩れ」そんなリスクを承知で引き受けてくれたのは、地元神戸の小さな工務店。私も担当者もまだ三〇代、若さゆえの、怖いもの知らずで、難工事をやり抜きました。まさに“命がけ”の建築でした。1983年の完成からもう30年余り、六甲の集合住宅は、Ⅱ期、Ⅲ期と“増殖”しています。クライアントは全て違いますが、コンセプトは変わらず、六甲山を背に青い海を望む“この場所にしかできない住まい”です。17

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