KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2019年11月号
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隆久 拝殿が落ちている、楼門が傾いている…しばらくは呆然としていました。昌子 私は拝殿が崩れているのを見て「主人、どうするのかしら、かわいそう」とまず思いました。でも、主人はすぐに立ち上がりました。隆久 私には父親の声が聞こえてきたのです。「私は三つの神社を復興させた。お前はまだ神社を建てたことはないだろう。今がチャンスや!お前は、神主として生田神社から神戸のまちを復興させるために、この震災でも生き残されたんや!」と。ここから私の気持ちがコロっと変わりました。家内の応援もあり、1年6カ月という驚異的な早さで生田神社復興に至りました。―そこからまた、お二人の順調な日々が続いているのですね。隆久 お陰さまで平成22年には神社本庁から鳩杖と、全国の神職の中で10人にだけ贈られる長老の称号を頂きました。600人もの方にお祝いいただき、私が詠んだ和歌を、家内が―お互いが認める良いところは。昌子 主人がしょげているのは見たことがなくて、いつも前向きです。私ものん気な質ですから、どんなことがあっても「主人ならきっと何とかするわ」と思っています。隆久 家内がクヨクヨしているのも見たことがない。明るい性格ですから、すごく助けられてきました。細かいことでは毎日、怒られてばかりですけどね(笑)。―人生を夫婦円満に全うする極意は。隆久 極意は、何事も難しく考えずに二人で前だけを見て歩むことでしょうか。人生は常に順風満帆などということはなく、必ず挫折する時がある。その時、どう心を切り替えるかが大切。私たちは二人よく似た性分、いつもこんな調子ですから、それができたのだと思います。―80年余の人生と結婚生活56年の重みを感じます。ありがとうございました。大きな用紙に筆でしたためてくれました。生田神社崇敬会の会長を務めていただいていた貝原俊民さんから祝辞をいただき…。その4年後にあんな事故に遭われるなど思いもしませんでした。神戸にとって大切な方、私たちにとっても忘れられない方のお一人です。たとえ挫折しても、気持ちを切り替えることが大切49

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