KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2019年11月号
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20世紀までの科学技術の進歩、というのは基本的に認めます。ですが、AIという言葉が出てきて以降に関しては懐疑的、これは人類の首を絞めるものだと思うようになりました。だからこれで、人類は絶滅していくでしょう。そういう技術を使うことによって、人間自身の“自力”がなくなっていくから自滅します。だって介護までロボットがやるようになってしまったら、介護という努力をしようという意識を削ぐことになります。そういうことがあらゆる面で起こってくるでしょう。便利になりすぎていったら人間は自堕落になるだけです。ゲームをするしかなくなる。でもゲームをする人間で生産性のある人間がどこにいます?人類は、自分の首を絞めるところまで行きつきました。これは取り戻しがきかないでしょう、一度死に絶えるところまで行かないとダメでしょうね。そして次世代の子どもたちには、この悲惨な現在を脱出する方法を見つけ出してほしいと思うし、そういう子どもに育ってほしいと願っていますが、恐らくかったことです。それまでは、自分のコンテは無条件で作画をしてもらってましたからね。『ハイジ』や『アン』あたりでもこれをやるのかっていうのを本当に見せつけられて、あのお二人を叩きのめしてやろうと、そこであのアムロ・レイというキャラクターが生み出せたんだと思いますね。アムロのようなキャラクターを、僕が創出できたのは、つまり作家性のない僕がそれをできたのは、そういうモチベーションがあったからです。当時、ガンダムを作る半年ほど前から『ハイジ』のコンテを切っていたのかな。ああいう気分を持たせてくれる人に出会っていなかったら、ガンダムはできませんでした。リアリズムを想定しないとキャラクターは動かせない。キャラクターのリアリズム。巨大ロボットものの敵味方なんて、もともと絵空事でしょ。だけど、ハイジ見てごらん、『母をたずねて三千里』のマルコ見てごらん、覚えているでしょ?あれは体感があるからなんです。高畑監督は、存在論として考えられる方で、とても重いのです。高畑監督が亡くなるまでは、彼がガンダムに影響している人だなんて思っていなかったんです。だって、高畑さんと宮崎さん、その下に富野が来ていたらおかしいでしょう。若さゆえに認めたくなかったっていうんじゃなくて、年をとってもこれは認めたくないことです。が、影響下にあったと認めます。─科学技術論と人間、という作品を創られてきた富野さんから見て、AIの時代をどうご覧になりますか。28

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