KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2019年11月号
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んですか」と言ったら、「何がいけないんですか?」と高畑さんは言う。「アニメとして絵が持たないでしょう」と言ったら「だって宮崎もいるし」って、そういう返事、それでおしまいですもん。『母をたずねて三千里』では、400字すべてが一人のセリフだったりするんですよ。「これで良いんですか、絵が変わりませんよ」と聞くとまた「何が悪いんですか」って。でもそれはそうなんです、言葉に意味があったら、15秒や20秒、絵が変わらずキャラクターの口だけが動いているってだけでいいんですよ。ロボット物では絶対にあり得ないことだけど、高畑監督の説明はただ一言、「何がいけないんですか」で終わりです。あとはこっちで理解するしかないというキャラクターです。ああ、あの2人のインテリジェンスにかかれば『ハイジ』や『赤毛のアン』はこうなるのか、と、思い知りました。僕は虫プロで仕事をしてきたと思っていたけど、このお二人にかかれば、あれは仕事だと評価されていなかったんだ、って徹底的に思い知らされました。だからその後の仕事は、やってくれないかって言われたときは、いつも二つ返事で引き受けました。もらったシナリオで僕がコンテを切って、それが実際に使われたのかどうかはわかりません。たまに忙しい中で番組を見て、徹底的に直されたコンテってのもありましたけど、そういうのは今まで経験したことがな27

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