KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2019年11月号
23/53

ちゃいけない。6館全部見てください、というぐらいです。─たくさんの作品がありますが、思い入れが深い作品はどれかというのはありますか?そういう常道的な質問には答えないようにしているんですけど(笑)というのは全部思い入れがあるので、どれかは選べません。仕事だから、ガンダムばかりを言い続けること、それが苦痛になったりもします。結局ね、できの悪い子ほど可愛いんですよ。たくさんの中から、この子忘れられてるな、お父さんの力が足りなかったからな、というのもあって、全部が全部楽しいわけじゃない。でも今回の内容に関しては、これは展示しないでくれというようなことは僕は一切言わなかったから、こう並べられればグウの音も出ないし、それに全部良いものだけを並べていると、他人に対してウソをつくことになるかもしれない。だから僕にとっては何人か、みにくい子がいるわけだけれど、みにくい子が可愛いということはあります。ては断りを繰り返して、結果、これも時代か、美術館の権威もクソもないのかと思って(笑)、お受けして、やっていただいたのです。そういうわけで、今回の展覧会に当たっては、学芸員の方に丸投げして、僕は一切の主導権を放棄しました。その代わり、手元にある仕事関係の資料は全部出すことだけは、覚悟を決めてやりました。これをこうしてくれ、ああしてくれといったことも一切言っていません。それで、まず福岡会場でオープンして、結果的に大変多くの方が来ていただいたと聞きましたけれど、それでもこの後全国6館でやるような意味はない、と思っていたんです―昨日までは。実は昨日、ここ(兵庫県立美術館)でだいたいの展示を見せていただいたのですが、非常にびっくりしました。というのは、出展者側の僕から見て、福岡会場で「ちょっと気に入らないな…」と思ったところが全部改善されていたからです。並べ方ひとつとっても、学芸員というのは編集者みたいなもので、その編集者がちがうとこんなにちがうのか、という“違い”が見えてきて、前に見えなかったものが見えてくる。僕は、作り手ではない、作品のディレクションをやっているだけの立場の人間なんだけど、そのディレクションをこういう並べ方にするとこういう方向性が見えてくるんだな、というのは、展示してみなくちゃわからないわけです。つまり、場所が変わるというのは単純に会場が変わるということだけではなくて、その展示の中身も意味あいが変わってくるということで、僕自身も衝撃を受けました。まさかこんなことを自分で言うようになるとは思っていなかったんだけど、「福岡(会場)を見ただけで安心するなよ」と(笑)。つまり、ここを見たら次も見なく25

元のページ  ../index.html#23

このブックを見る