KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2019年10月号
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自我自損展 について横尾忠則現代美術館 館長補佐兼学芸課長山本 淳夫横尾忠則現代美術館における、横尾忠則自身のキュレーションによる展覧会がついに実現しました。キュレーションとは、あまたある美術作品のなかから独自の視点で取捨選択し、展覧会という新たな価値を生み出すことです。展覧会を活かすも殺すも、キュレーターの腕次第、といっても過言ではありません。ところが、実際には横尾さんの作品選びは拍子抜けするくらい気軽かつ直観的で、ものの30分くらいであっという間に済んでしまいました。さらに展覧会タイトルも、当初予定していた「自画自賛展」から、「自我自損展」に変更となりました。横尾さんがやろうとしているのは、いわば「アンチ・キュレーション」なのではないでしょうか。展覧会にはキュレーターの自我や主張が反映されるもの、という先入観を覆すような実験的なアプローチは、横尾さんでなければできないことだといえるでしょう。また今回、横尾さんは昔の自作に大胆に加筆した、まさに「自画」を「自損」した新作3点を発表します。「自我」からいかに自由になるかということは、横尾さんが長年テーマとしている一種のライフワークのようなものです。「自我」をめぐる不可能への挑戦とも思える横尾さんの壮大な実験、あるいは冒険は、果たしてどのような展覧会として結実するのでしょうか。横尾忠則現代美術館(兵庫県立美術館王子分館)神戸市灘区原田通3-8-30TEL.078-855-560710:00~18:00/展覧会開催中の金・土曜日は~20:00 月曜日休館(祝日、振替休日の場合は翌日)、年末年始、メンテナンス休館(不定期)《I'm Running Out of Time》1994年頃-2013年 作家蔵 横尾忠則現代美術館寄託43

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