KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2019年10月号
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連載 カワムラの"神戸ビーフ"への思いビフテキのカワムラ 三宮本店神戸市中央区加納町4-5-13ヌーバスピリット1階TEL:078-335-0399FAX:078-335-0605時代の風を読み帆を張ってカワムラの草創期1972年に川村春二がオープンしたカワムラの第1号店はわずか10席程度の小さな店構えで、当時人口が5万人にも満たぬ三木の市街地の端っこ、三木山の森が迫るところにあった。立地は決して恵まれていない。しかもその頃は外食する文化がさほど根付いておらず、播州の小さな街で都会的な鉄板焼ステーキというミスマッチもあり、そのうち潰れるだろうと誰しもが思った。しかし、春二は前進した。郷里から呼び寄せた信頼できる相棒と3人で、しゃかりきに働いた。当時はステーキだけでなく庶民的な食材も用意していたという。美味は正直だ。最初は恐る恐る様子見で入ってくる客も、ひとたび料理を口にし、温かいもてなしを受けるとたちまちファンに。リピーターが少しずつ増えていった。地元の人たちも若いシェフを応援してくれた。さらに社会の変化も後押しする。マイカーの普及で街はずれは逆に車で行きやすいロケーションとなった。近隣ではゴルフ場開発が進みプレー帰りのゴルファーたちが立ち寄ってくれるように。口コミで評判が評判をよび、瞬く間に繁盛店となる。客が増え忙しくなるたびに店は手狭になる一方、春二の腕は磨かれ商売にも自信を深めていった。そして創業からわずか3年後の1975年、伊川谷に第2号店となる神戸本店をオープン。兵庫の大動脈、第二神明道路の大蔵谷IC近くへの進出はまさにモータリゼーションを意識したものだ。マーケティングという言葉が知られていなかった頃だったが、春二はすぐれた嗅覚でそれを実践し、時代の風に乗っていった。 Vol. 0214

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