KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2019年9月号
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カワムラの"神戸ビーフ"への思いビフテキのカワムラ 三宮本店神戸市中央区加納町4-5-13 ヌーバスピリット 1階TEL:078-335-0399FAX:078-335-0605故郷を離れて料理の道へカワムラ創業秘話1956年の春、高校を出たばかりの一人の青年が、集団就職列車に揺られ広島から関西へとやって来た。彼の名は川村春二。軍人の父に厳しく育てられ、一本筋の通った負けん気の強い18歳が選んだ道は飲食業。有馬温泉の名門、有馬グランドホテルに「金の卵」として迎えられた彼は、厨房で額に汗して働きながら宴会料理を学び、気がつけば和食、洋食、ケーキづくりまで多彩な技術を会得していった。3年ほどの年季を積んだ春二はさらなる成長のため大阪へ出て、洋食をメインに料理人として腕をさらに磨いていく。さまざまなレストランを渡り歩くことで技量の幅を広げるとともに、自分なりのスタイルを模索していった。そんなある日、鉄板焼レストランで働く機会に恵まれる。それまで奥の厨房で黙々とフライパンを握っていた彼にとって、銀盤のように輝く鉄板で肉を焼く仕事は胸躍った。味や見た目だけでなく、音や香りが立体感を添える。そして目の前の客が自分の手先を凝視し、自分の焼いたステーキを口にして、時に笑顔をほころばせ、時に黙って頷く。ダイレクトに伝わってくる反応はモチベーションを高め、「お客様に感動を」という信念を確固たるものとしていった。これぞ五感を揺るがす料理の舞台芸術…自分で店をやるならこのスタイルだと、春二は必死に鉄板焼のノウハウを学んだ。それからほどなく、春二は弱冠24歳にして一国一城の主となる。1972年、姉の嫁ぎ先という縁もあり、三木の街はずれにビフテキのカワムラをオープンした。決して良い立地ではないマンションの一室、たった10席でカウンターだけの小さな店だったが、そこには大きな希望が満ちあふれていた。 Vol. 0114

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