KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2019年6月号
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もに、ファッションアイテムのひとつでもある。ゆえに流行は大切。スピーゴラではトレンドとトラディションの絶妙なバランスを見極めデザイン、イタリア仕込みらしい遊び心をアクセントに添えつつ、顧客の希望や用途、素材特性に合わせてイメージを熟成させていく。その造形を実現するのが、ウゴリーニ氏の教えを礎に自らの知見を深めて磨いた靴づくりの技術だ。ルーペを覗かねばわからぬほど細やかなステッチは息を呑むほど。やや踵が小ぶりなスタイルは手づくりのビスポークシューズならではだ。見えないところに一切の妥協も許さない。仮縫いで丹念に履き心地を確認、薄皮を剥ぐように彫った木型が足と一体化するようなフィット感を実現し、ソールの中の複雑な構造は雲を履くような感覚をもたらせる。天窓からやさしく明かりが注ぐアトリエは、意外にも静かだ。時に鳴る槌音やミシンの音もやさしく、作業の丁寧さがうかがえる。丹念に丹念を重ねたハンドメイドゆえに価格は決して安2階にある応接室。ここで顧客と話し合いを重ねていく28

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