大竹 英洋 (おおたけ ひでひろ)1975年生まれ。写真家。一橋大学社会学部卒業。1999年より北米の湖水地方「ノースウッズ」をフィールドに、野生動物や自然と人間との関わりを撮影。「ナショナルジオグラフィック日本版」、「Canadian Geographic」、「たくさんのふしぎ」など、国内外の雑誌、新聞、写真絵本に作品を発表。主な写真絵本に『ノースウッズの森で』、『もりはみている』(以上福音館書店)。写真家を目指した経緯とノースウッズへの初めての旅を綴った『そして、ぼくは旅に出た。 はじまりの森 ノースウッズ』(あすなろ書房)で梅棹忠夫・山と探検文学賞を受賞。2018年日経ナショナルジオグラフィック写真賞ネイチャー部門最優秀賞。www.hidehiro-otake.netFacebook@HidehiroOtakePhotographyInstagram@hidehirootakeて気配を消して死んだふりをするんです。たぶん僕の足音に気づいたのでしょう。確かに写真の子鹿はかわいいですが、必死に生きていこうとする姿でもあるんです。この一枚は、僕にいろんなことを考えさせてくれます。森の中には想像もしなかったような出会いがあるということを、狙った訳でもないこの写真を見るたびに思います。知識や経験が増えてくるとなんとなく予測がつくようになり、計画をしてしまいがちです。もちろん、計画しないといけないこともあるんですけれど、それだけにとらわれてはいけない。森の中は出かけてみないとわからないのです。魅力いっぱいの神戸実はノースウッズの中核部分が、昨年世界遺産になったんですね。それはカナダで初めての自然と文化の複合遺産で、そこでは人々の伝統的な生活があるのです。すでに始めていることですが、僕はそこの人々や暮らしもより深く撮影したいなと思っています。また、最近はホッキョクグマの撮影をしていることから、少しずつ北極圏にも興味を抱いています。ノースウッズはライフワークとして継続していきますが、フィールドの範囲が北側へ広がっていく気がしますね。その前にひとつ、ノースウッズを紹介する作品集をきちんと出したいと思っています。僕が神戸に移り住んで3年が経ちましたが、移動も便利で、本当に暮らしやすいですよ。こんなに晴天率が高くて気候も良いところとは、住んでみるまで知りませんでした。海と山が近く、夏の夜も過ごしやすいです。あと、街の大きさがちょうどいいですね。最も近い駅は塩屋になるんですけれど、絵画・イラスト・音楽・版画・写真・デザイン・編集など表現に関わる方がたくさん集まっていて、短期間で人の輪が広がっていきました。そして食材。料理は食べるのも作るのも好きなんですけれど、買い物も楽しいです。お世辞ではなく、本当に良い街だと思います。大竹英洋著『そして、ぼくは旅に出た。はじまりの森 ノースウッズ』あすなろ書房。定価(本体1,900円+税)27
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