KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2019年3月号
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るなど、新しいライフスタイルが当たり前になるかもしれません。平尾真智子(以下:真智子) 今回、IoT設備はパナソニックがメインですが、メーカーも住宅のIoT化は模索している段階です。よく言えば先進的に取り組んだ建物ですが、逆に言えば建設中に設備がアップデートしていき、今後より最新の機能を装備することができます。いまは過渡期で進化のスピードが速く、どうしてもそうなってしまいますね。もちろん新しい機能を付加することや、バージョンアップすることも必要で、今がゴールではなく進化に対応していかなければいけないと思います。平尾 一方で「つながる」にはリスクもあります。例えば、Wi-Fiなどの無線通信の安全性はあまり議論されていません。自分たちが家で使っている電波が漏れないような仕組みをつくらないと、隣や外から家の中の様子が丸見えになってしまいますよね。芦屋の新しいマンションではそのバリアを考えています。無線通信の時代において情報漏洩への対策は大きな課題ですが、その電波が漏れにくく安全性が確保された地下室で、どういうようなライフスタイル、生き方が生まれるのか興味深く思います。実在のライト建築をモチーフに─デザインにはどんな特徴がありますか。平尾 建物のデザインは原点に戻って、フランク・ロイド・ライトの初期の作品、プレイリースタイルの代表作をモチーフにしています。三田はハートレイ邸、芦屋はメイ邸がモデルです。真智子 これまでのオーガニックハウスのシリーズは、ライトの思想を採り入れて日本風にアレンジしたり、ライトの愛弟子のジョン・ラッタンバリー氏がデザインしたりと、現存するライトの作品のデザインに近いものは少なかったんですね。今回は可能な限り現存する建物の一番良いところを敢えて採用しています。そのあたりがこれまでとは少し違うスタンスです。平尾 芦屋はまさにライトの名作、ヨドコウ迎賓館(旧山邑邸)の近くですから、外観デザインは特に心を砕きました。もちろん、周りの環境との調和を考えてプランニングしています。マンションはいま明治村で保存されている帝国ホテルがモデルで、ほぼ同じ色合いの櫛目引きタイルを使用していますので、日本の風土に合う土の肌合いを感じるでしょう。モデルハウスも櫛目のレンガを使っていますので、違和感なく受け入れてもらえるのではないでしょうか。景観の一体感という面でまちづくりに馴染むと思います。2月に完成した三田モデルハウス。クラシカルな外観でありながら、IoTやAIスピーカーを駆使し、自動化を採り入れている43

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