KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2019年1月号
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でパティシエではなかったんですよ。厨房に入っていたのは昔のレストラン仲間の方々で、自身はあまり菓子をつくっていなくて、売ることと好まれる商品や喫茶メニューを考えることで貢献しようとしていました。─いよいよ今年、創業50年を迎えますが。蟻田最近のIT企業など1年ももたない企業が多い中で、50年も生き残っているという意味は小さくないと思います。ですが、50年だからといって気合いを入れすぎて違うことをやるという訳ではありません。確かにお客様は新しいものにも反応してくださいますが、これまで我々がやってきたことに反応していただくことが普通だと思うので、これまで50年やってきた自分たちの資産や強みに改めてシフトして伸ばしていこうと。─フィナンシェもその資産ですね。蟻田ですからフィナンシェに代わる新しい商品を次々と出すのではなく、フィナンシェを次の50年も愛顧していただけるようなことを先ずは考えなければいけないと思います。「できることをやる」精神─アンリ・シャルパンティエのフィナンシェはなぜ人気なのでしょうか。蟻田技術的には、我々ができることですから他社さんもできると思うんです。だけどそれをやるかやらないかです。日頃からこの商品で一番になると言い続けると、実行に移すものです。世の中は誰も想像がつかないようなことをするより、できることをやるかやらないかだと思うんですよね。夏休みの宿題だって1日1ページずつやるのが一番良いとわかっていても、やらないじゃないですか(笑)。一方でフィナンシェを真面目につくるのは良いことなんですけれど、水や空気のように当たり前過ぎる存在になって、その大切さを忘れてしまってはいけない。そのことを経営陣が伝え続けることで、現場からさまざまな提案があがって、進化しているのです。─具体的に、どのように進化しましたか。蟻田フィナンシェはこの5年、お客様の手に渡る時点では同じように見えますが、実はバージョンアップしています。例えば、主原料のアーモンドは油分が多いので収穫した時点から酸化しやすくなります。酸化すると美味しくなくなるんですよ。フィナンシェをつくるにあたってアーモンドは挽き、パウダーにしますがパウダーにすると酸化が進みやすいんです。酸化を最小限にする為にアーモンドを挽く機械をラインに据え、生地をつくる直前にパウダーにするようにしたのです。そういう姿勢は間接的にお客様に伝わるので大切です。─大変な苦労ですね。蟻田私は周りの人に恵まれていて、ここ数年一緒にやってきたメンバーが大変な苦労をしてくれたと思うんです。これくらいやらないと自分たちのフィナンシェじゃないし、これくらいやらないと生き残れないという思いがあったからこそ、より良くするための提案が出てきたのではないでしょうかね。ここ何年かでスイーツはコンビニも駅も空港29

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