KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2018年11月号
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で、私の僅かな知識と技術ですが、これを日本の若い職人さんに伝え、お世話になった洋菓子界に少しでも恩返しができれぱと思っています。 基本を守りながら、日本人の好みにも合わせる日本のバウムクーヘンは卵白と卵黄を一緒に泡立てる共立てで、乳化剤や膨張剤を使用してソフトに仕上げるのが主流になっております。私のバウムクーヘンは卵白と卵黄を別々に泡立てて、一工程手間をかけて乳化剤や膨張剤を使わずに作っております。ドイツ人はバウムクーヘンに限らず、しっかりした歯ごたえのあるものを好みますが、日本人はふんわり、しっとりした食感も好きですね。そこで、私は別立ての基本は守り、日本人の好みに合わせて仕上げるように工夫しています。ドイツではプレーンのみで、焼き上げてから表面にチョコレートやフォンダンをコーティングして仕上げたものが主流です。「バウム ウント バウム」では、プレーンとチョコレート味があり、どちらも表面をグラズール(砂糖)で仕上げています。チョコレート味は生地にチョコレートを混ぜ込んであります。これからもいろいろとお客様の声をお聞きしながら、喜んで頂ける商品の提供も大切にしようと考えています。奥深いバウムクーヘン。まだまだこれからも研鑽しますバウムクーヘンはドイツでも焼いていましたし、 ユーハイムでも私のオリジナルのものを作らせていただいていました。材料の配合は至って簡単。卵2、砂糖1、粉1 、バター1。 その基本の許容範囲内で調整しますが、生地は同じように作っても気温などの条件により日々変わります。その中で、一定の品質を保ち、いかにしっとりさせて美味しくするかが腕の見せ所でしょう。理想としては分担作業ではなく、一人の職人が生地づくりから、出来具合を上手く調整しながら焼くところまで一貫して担当するのがべストです。バウムクーヘンはシンプルですが、とても奥深くて私のように年齢を重ねた菓子職人にとっても魅力的なお菓子です。しかし、自己満足だけではだめですからね。 お客さまに末長く愛されるように、 まだまだこれからも研鑽していかなくてはいけないと思っています。マジパンを生地に練り込むのがドイツ流「バウムクーヘンを焼く毎日が幸せ」と井谷さん46

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