に2015年第5位の経験を活かし表彰台を目指す。参加国は選ばれた24ヵ国だけ。チーム・ジャパンとして2人のシェフと1人のコーチが付く。応援団だ。前回のボキューズ・ドール世界大会では、アジア・パシフィック大会から大変な苦労があった。例えば現地では手に入らない食材を持ち込もうとして税関で通らなかったり、食材を盗まれたり捨てられたり、持ち込んだ調理器具が電圧の違いのためか突然壊れたりした。それでもスタッフが一丸となって協力して危機みが悪くなった患者さんにこのような嚥下スープを作るきっかけになったのは、髙山シェフのお父様の肺がんだ。抗がん剤治療中は強い吐き気などの副作用で食べられなくなることがしばしば経験されるが、髙山シェフは父親のために少しでも口から食べられるようにと食事を手作りした。いろいろ工夫して食べてくれるようになると家族も喜んでくれたことがきっかけになったという。そして「食べられなくなった人が一口美味しいと感じて、自然に手が伸びていって、また一口食べ、笑顔になる。それを見た瞬間、自分の中に喜びと活力を感じる」と言われる。「食べて良かったと思ってもらえるような物を作りたい。そのためには、例えば玉ねぎを香ばしく焼く、こういう作業が大切で、そうすることによって香りがスープに移動するのです」と髙山シェフの思いは尽きない。髙山シェフは世界一のフレンチ・シェフを決めるボキューズ・ドール世界大会にリベンジされている。来年1月、日本代表としてフランス本国での世界大会を乗り切った。髙山シェフの人徳によるものだと思われる。今回はその経験を生かして、しっかり準備されていると言う。味覚も好みも日本人と微妙に違う欧米の審査員に日本らしさをアピールすることも求められる。料理は一番大事だが、それだけでなく、料理を飾るお皿やその上に乗る日本らしさを演出するオブジェなど、職人さんといっしょになって考えることも必要だ。一方、ボキューズ・ドール世界大会上位クラスは、国が予算を付けて後押ししているのに対し、我が国の援助はなく、毎日の業務もしながらよく奮闘されていると思う。料理のテーマは大会の直前まで知らされないが、9月の終わり頃、フランス産の仔牛に決まったそうだ。「食べられなくなった人が一口美味しいと感じて、また一口食べ、笑顔になる」。その心はきっと厳しい審査員の心を動かすに違いない。髙山シェフ自身の心の安定は必須で、妙心寺での座禅も欠かせない。フランス・リヨンでの本選へ向けて皆応援しています。月に一度、介護付有料老人ホーム「Mボヌール」へ出張してもらっている28
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