KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2018年9月号
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上方落語の祖米沢彦八ってどんな人?小説家さん木下 昌輝─笑いで権力にあらがう 上方落語の祖、米沢彦八は江戸時代で上方文化が一番華やかだった元禄時代の人です。出身は難波村とされています。調べた限り当時は今の落語家やお笑い芸人のようにお笑いだけをプロフェッショナルでやっていた人はいなかったのですけれど、そんな時代に登場したはじめてのお笑いのプロと言えるのではないでしょうか。 彦八が最初に有名になったのは、笑い話というよりモノマネなんですよ。しかもなんと大名のモノマネをしたらしいんです。「俄大名」とよばれていたこの芸、身分制度が厳しかった当時としてはあり得ないんです。話芸でも武士を馬鹿にする話が多かったですし、彦八は大衆の側に立ち、反権力という側面も持っていて、僕はそこに魅力を感じ小説『天下一の軽口男』を書こうと思ったんです。 ですから役人たちに目をつけられていたようで、彦八が俄大名をしていたら「けしからん!」と役人が捕まえに来たが、彦八大阪のお笑い文化の源流を遡ると、米沢彦八という一人の男にたどり着く。その人生を描いた小説『天下一の軽口男』(幻冬舎)の作者、木下昌輝さんに彦八や落語のルーツについてうかがった。木下 昌輝(きのした まさき)小説家1974年大阪市生まれ。近畿大学で建築を学び卒業後ハウスメーカーに勤務するが、作家になりたいという夢を追い退職、フリーライターとして活動しながら小説を書き続け、2012年にオール讀物新人賞を受賞。デビュー作の単行本『宇喜多の捨て嫁』に続き、『敵の名は、宮本武蔵』『宇喜多の楽土』も直木賞最終候補にエントリー。高校生直木賞、舟橋聖一文学賞、咲くやこの花賞など受賞多数。最新作『絵金、闇を塗る』(集英社)にも注目!旅行ペンクラブ会員36

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