KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2017年10月号
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現在の聖堂が竣工した。設計は梅木省三。パリのサントシャペル聖堂をモデルにした尖塔が聳えるゴシックリバイバル様式の美しい姿は、夙川のランドマークとして親しまれており、西宮市の都市景観形成建築物や兵庫県の景観形成重要建造物にも指定されている。鉄筋コンクリート造の堅牢な建物で、阪神・淡路大震災でも耐え、外観はもとより内部空間も建造当時と変わらぬ姿をとどめ、建築史的にも重要な意味をもっている。とにかく驚くのは、今も綺麗で、古さを感じさせないところ。85年も前に建てられたとは思えない。手厚くメンテナンスされているのだろう。阪神間モダニズムの時代の先取的な空気が、そのまま聖堂の中に閉じ込められているかのようだ。しかも、重厚さよりも洒脱さを感じ、さすがはオシャレの国、フランスのエスプリを感じる。内部は柱がない大空間。天井が高く開放感があって、不躾ながら周作少年が走り回りたくなる気持ちもわからなくもない。教会にはそれぞれ守護聖人があるというが、ここではブスケ神父が敬愛した聖女テレジアがそれにあたり、祭壇正面のアルコーブにはテレジア像が置かれている。キリスト教は遠藤に西洋的意志と日本人の意識の違いを経験させた。そしてこの母との絆の証でもある〝合わない服〟を〝母性〟で仕立て直したという議論もあるが、信徒としての第一歩を刻んだ教会の守護聖人が女性というのも偶然でないかもしれない。拷問にも自らを貫いた神父栗色の髯をはやしたそのM神父さんはいかにも向こうの出身という素朴さと土の臭いがした。彼は私たち悪童にはこわい存在だった。特に私のようにミサの間も悪戯ばかりしている子供には平手打ちを食わせることもあった。 『神父たち』ゴシックリバイバル様式の教会で、フランス・パリのサントシャペルをモデルにした尖塔は、夙川のランドマークとなっている33
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