KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2017年9月号
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化粧品学、心理学という異なる領域の専門家が協働して進めています。─具体的にはどのような化粧品になるのですか。 抗がん剤治療の副作用で肌が黒ずんでしまった方や、濃いシミやクマが出てお悩みの方のお顔の色をカバーするファンデーションです。カバー専用と言っても濃い化粧品で覆い隠すのではなく、光とハーモナイズ(調和)して血色よく見せる、全く新しい考え方の化粧品になっています。─なるほど、それならば年齢・性別関係なく、男性やお子さんも使用できそうですね。現在、芦屋病院などをボランティアで訪問し、メイクアップのアドバイスやセラピー活動も行われているとか。 化粧やファッションはアンチエイジングや心の充実を促す効果があるというデータもございますので、少しでもお役に立てればと思いまして。例えば、お肌の変色を気にしてお見舞いを断ったり、外出を拒んでいたりした方がご友人に会えるようになったとか。また退院して社会復帰された方にも喜んでいただいています。病気治療の副作用なのだからどうしようもないと諦めていた方から、「肌悩みをカバーできて気持ちが明るくなりました!」と涙を流さんばかりに喜んでいただけ、逆に私の方がセラピー効果をいただいています。─がん医療の進歩によって、仕事をもちながら通院されるがん患者さんも増えています。 特にお化粧経験がない男性の方に好評いただいています。日焼けしたような健康的な肌色になり、周りに心配をかけずに仕事に集中できるのが嬉しいとの声も寄せられています。─モデルと医療、関わりがないように思えましたが、実はそうではないのですね。この研究に参加されたきっかけは? 幼いころから携わってきたモデル業を活かし、社会に恩返しできるものはないかと考えました。単にキレイに魅せるだけではない美容に関する知識を学術的にまとめ、後進に引き継ぎたいと。それで大阪樟蔭女子大学大学院の化粧ファッション学科に入学し、研究に参加させていただいた経緯があります。今後も医療と化粧・ファッションのかけはしとなり、患者さんの外見に関する不安や悩みを少しでも軽くして、治療中も今までどおり、自分らしく過ごしていただくことに努めたいと思います。─治療後の人生に夢を持って、快適な治療生活を送るのは重要なことだと思います。現在、治療を受けておられる方、これから治療を受けられる方の、心も元気になる価値ある研究ですね。伊藤 紀美子(いとう きみこ)田嶋株式会社 代表取締役社長神戸生まれ。95年より同社社長に就任。02~06年神商議女性会会長、07年から国際ビジネス委員長。16年、女性初で神戸商工会議所の副会頭に就任。田嶋株式会社/1899年、繊維を主体とした貿易商社としてスタート。会社創業110周年の2009年に美容&健康分野を新設。オリジナルブランドのスキンケア「PLUSUI(プラスイ)」を開発販売。同ブランドでナチュラルミネラルウオーターも販売39

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