KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2017年4月号
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ジネスを目のあたりにした後の阪神・淡路大震災。多くの建物が一挙に瓦礫になったんですね。地球の有限なものを、建築を介して人間が使えないものにしてしまっている。未来の子供達に大きなツケを残す危機感を感じました。石油から作る建材を極力排除し、壊れてもまた自然に還る木や土でつくる家を提案したいと。そんな家はシックハウスにもなりにくいのです。震災で祖母を亡くしたこともあり、人生一度きり、いつかやりたいではなく、今やるべきだと独立を決心しました。─震災で私達の住宅の耐震化に関する意識も変わりましたね。木や石よりもコンクリートの方が強度はあるように思いますが。 世界最古の木造建築「法隆寺」は、1300年間、この地震大国日本で現存しています。木材は、正しい使い方、きちんとしたメンテナンスによって、コンクリートにも勝るとも劣らない建材です。また、実は自然乾燥された伐採後300年くらいまでの「古材」は「新材」より丈夫なんですよ。―古材は強く、味わいもあるし、再利用で資源循環型社会にも貢献すると。屋根を緑化する「草屋根」にも力を入れておられます。 まず夏涼しく、その断熱効果は夏場の屋根からの熱の侵入をアスファルトシングル葺きの22分の1にする解析結果がでています。屋根が植物で覆われるため、冬は建物の熱を逃がしにくくしてくれ、暖かいんですよ。町のヒートアイランド現象の緩和につながります。―クーラーが要らないですね。節電、省エネにも地球温暖化防止にもなります。草屋根はホッとできて、癒し効果も抜群ですね。 草屋根に住まうオーナー同士の意見交換の場の提供と、草屋根を設計・施工したい技術者の勉強の場を兼ねて、2010年に「草屋根の会」発足しました。屋根の上でピクニックや花を楽しんだり、野菜を収穫したりという楽しいこと、逆に雨漏りはしないのかなど不安なことも直接見て、質問していただけます。今後目指すのは、草屋根はもちろん有機栽培の自給自足など、「自然と共存し、環境や人に負荷をかけない」エコビレッジ。古い建物を改装して、エコな賃貸住宅も増やしたいと考えています。―地球温暖化が問題になっている現在、私達一人ひとりが未来への強い思いをもって、行動しなければなりませんね。伊藤 紀美子(いとう きみこ)田嶋株式会社 代表取締役社長神戸生まれ。95年より同社社長に就任。02~06年神商議女性会会長、07年から国際ビジネス委員長。16年、女性初で神戸商工会議所の副会頭に就任。田嶋株式会社/1899年、繊維を主体とした貿易商社としてスタート。会社創業110周年の2009年に美容&健康分野を新設。オリジナルブランドのスキンケア「PLUSUI(プラスイ)」を開発販売。同ブランドでナチュラルミネラルウオーターも販売35

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