KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2017年3月号
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春の香が感じられる季節となりました。春霞にけむる神戸港が、長い坂道から観られるような季節の到来です。ベール・ド・フージェールのウインドウの中にこのたび見つけたのは、19世紀のオーストリアで造られたと思われるデスク。オーストリアはハプスブルク家ゆかりの地。マリア・テレージアやマリー・アントワネットの名は、今や知らない人はいません。とりわけ、ヨーロッパの中でも貴族階級の女性の為の家具が沢山見られます。マリア・テレージアンロココスタイルは、金彩が多く使用される事がその特徴ですが、この優雅な金属のデスクの天板にはガラスがはめこまれ、下のダマスクのシルクの布張りを保護しており、その周りのデザインは、英国の18世紀のインテリアデザイナー、ロバート・アダムが作り、貴族たちが好んだスクロールやアラベスク文様、鷲などが施されています。ネオクラシズムとロココスタイルが混左右対称の中にも優しさがみられるデザイン引き出しの中まで金属で出来ている勝利を意味する鷲。脚の部分には、中央のメダリオンの中に貴族のアクセサリー・カメオを感じさせる薔薇のデザイン在する珍しいデスクで、時には天板のガラスの上に可動式の鏡を置き、ドレッシングテーブル(化粧台)としても使用されたようです。現在は、その天板のキドニーシェイプを壁際に飾り、コンソールテーブルとしても使用していただける大変珍しい家具です。19世紀に特別注文品としてあつらえられたものと思われます。貴婦人の艶やかな姿と拘りが感じられる繊細なギルトブロンズ、職人技が光っています。“特別なもの”との出会いベール・ド・フージェールの家具佐藤 よし子(さとう よしこ)1988年、日本初の英国式フィニッシングスクール『ザ・クイーンズ・フィニッシングスクール』を神戸にて開校。ハウスキーピングやテーブルセッティング、マナーについて指導。『ダウントンアビー』の世界などをレクチャー。NHKテレビ『美の壺』、『グレーテルのかまど』、雑誌『家庭画報』、『婦人画報』など各種メディアにて活躍中佐藤よし子がご紹介する今月の逸品 ⑧10

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