KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2017年2月号
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ニテコ池東から名次町を望む。畔には美しい桜が咲き誇る海の向こうから来た幸福 えびす様は海からやって来た神様で、海の向こうから福をもたらす使者として崇められていた。また、西宮神社のある社家町の西は市庭町という。ここはその名のとおり、「市」のたった「庭」=場所だ。もともと漁労の神であり、商売の神でもあるえびす様のお膝元。中世には海で獲れた魚介や船で運ばれた物資などが門前町に集積し、海からもたらされたその賑わいがいまの西宮の街の基礎を形成していった。 一方、松下幸之助率いるパナソニックが戦争から復興し世界的企業として君臨するきっかけも海の向こうからもたらされた。戦後、GHQによる厳しい制裁を受けてマイナスからのスタートとなったが、昭和27年(1952)にオランダ、フィリップス社との提携を契機に松下電子工業が誕生、技術力が強化され、昭和36年(1961)からはアジア諸国を中心に海外拠点での生産を再開。この前後から奇跡とよばれる日本の高度経済成長を牽引する経営者として、松下幸之助は世界から熱い視線を浴びるようになった。 また、ともに生活に近い存在であることも共通点だ。えびす様はまさに暮らしに密着した信仰を得て、庶民の神様として親しまれている。一方の松下幸之助は、良いものをつくって世の中の役に立ちたいとの思いから起業、業界にその名を知らしめることとなるアタッチメントプラグにはじまり、人々の暮らしを便利にする数々の製品を生み出してきた。今やパナソニック製品のない家を探す方が難しいだろう。 ところで、西宮神社には松下幸之助による奉納物などは特にないようで、大きな接点は発見できなかった。経営の神様は、商売の神様に頼る必要がなかったのかもしれない。しかし、ともに西宮に見えない力を見出し、この地を愛したということは、まぎれもない事実。この街に住んで、偉大な神様にあやかりたいものだ。31

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