KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2017年1月号
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上松明代クラシック演奏家の謎①『アルゲリッチはあがり症?』年初めの【音楽の力】は、音楽の歴史うんちくは置いといて、私たちクラシック音楽家の生態と申しましょうか、ちょっとした謎について記したいと思います。よくこう問われる。「大勢の観客の前で演奏する時、緊張しませんか。」この問いの答えは、イエスでノーだ。その意味とは。若い時分から注目され、現在まで変わらず人気の高いアルゼンチン出身のピアニスト、マルタ・アルゲリッチ。彼女について書かれた数冊の書籍とドキュメンタリー映画を拝読拝見したことがある。それによると彼女はあがり症らしい。しかし舞台上での毅然とした態度と、圧倒的演奏技術を見せてくれることからはとても想像出来ない。ステージ前にプレッシャーを感じることがあるかという問いにこう答える。「勿論パニくるわ。現実には起こることのない最悪のことを考えて到底弾くことは出来ないと思ってしまう。」事実、ドキュメンタリー映画で、本番直前の舞台袖でアルゲリッチが「もう帰りたい。弾けない。」と駄々をこね、マネージャーに強引に背中を押され舞台に駆けて行く場面があった。演奏家というものは、舞台に立ってしまえば腹をくくって自信と余裕を見せつけてくれる。十分過ぎる程の練習を重ね、自信がつくと、むしろ緊張が心地良くなり集中力が増す。ところが、練習の時点で、達成感の欠如や迷いがあると、自信が自分を押し上げる第13回(音楽の力)(音楽の力)(音楽の力)(音楽の力)(音楽の力)Powerofmusic上松明代(フルート奏者・作曲家)武蔵野音楽大学卒業。在学中にハンガリーの「音楽」と「民族」に魅了され、卒業後ハンガリー国立リスト音楽院へ留学。31歳で知的好奇心から兵庫教育大学大学院で作曲を学ぶ。演奏活動と同時にバイタリティー溢れる作曲活動も展開中。六甲在住。You Tubeにてオリジナル曲公開中。オフィシャルサイト http://akiyouematsu.com力に繋がらず、緊張になって現れる。観客数は関係しない。十人でも一万人でも同じ。しかしやはりどんなに膨大な練習を重ねた自負があっても、本番直前までは誰もが不安と、間違えたらどうしようという恐怖に苛まれる。演奏活動、今年で15年の私も、本番前の楽屋で、緊張から「なんでこんな演奏会を引き受けてしまったのだろう・・。」と吐露してしまうことがある。お客さんには気付かれていないことを祈りたい。続く。2017年、昨年に引き続き、本年も神戸の空の下、楽しく【音楽の力】を拝読して頂けることを願って。39
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