KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2016年10月号
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―中の坊は有馬でも歴史のある「十二坊」のひとつです。梶木 十二坊というのは、ご存じの通り、鎌倉時代に仁にんさいしょうにん西上人が熊野の権現さんの教えに従って、十二神将にちなんで有馬に「坊」と名の付く宿坊を設けました。そのひとつです。―まさに神戸の歴史とともにあった150年ですが、中でも大きな出来事といえば。梶木 やはり記憶に鮮明に残っているのは、阪神・淡路大震災です。有馬グランドホテルでは、当時の一号館が半壊し、2年半かけて中央館として再建しました。当時は館内を廊下でつなぐ工事をしている最中で、一部の壁を取り払っており、そのときに大きな地震が来ましたので柱が地下で損壊してしまったんです。―有馬グランドホテルは、最上階の大浴場が人気のひとつですね。梶木 当ホテルは高台にありますので、その立地条件を生かしたお風呂を造ろうと何度も話し合いました。「最上階に大浴場を造ろう」というのは、先代の梶木雅夫の強い思いでした。けれどもお風呂を一番上にもっていくというのは、お湯の運搬もそうですし、上に重いものが来るわけですから柱を相当しっかりしたものにしなくてはいけませんから費用もかかりました。しかしお客様には本当に喜んでいただけ、当館の最大の強みとなっています。社員教育に茶道の心を取り入れる―お客様に愛されるために、気を使っていらっしゃる点はどんなところですか。梶木 先々代である祖母がよく申していたのは、「何度も来たくなる旅館づくり」でした。奇をてらったようなデザインを導入したりというのではなく、有馬のお湯を楽しみに、何度も来ていただけるような運営を心掛けなさいということです。 おもてなしに関していえば、社員たちに茶道を学ばせています。前出の祖母がお茶が好きでして、当ホテルの庭には茶室「雅中庵」もあり、社員には利休の教えを感じながら、日々の接客に生かしてもらいたいという考えがありました。茶道には『利休七則(りきゅうしちそく)』という教えがあり、第一に「茶は服のよきように点て」から始まり、これは、抹茶は飲む人にとってちょうど良くなるように点てなさいという教えで、気配りに通じます。「利休七則」の教えを社員教育に生かす。有馬グランドホテル内には、茶室「雅中庵」がある中の坊瑞苑は、「有馬十二坊」のひとつ「中の坊」の流れをくむ有馬グランドホテルの最上階にある「展望大浴苑」29

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