KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2016年9月号
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上松明代プロの演奏家への道『演奏家のジレンマ』神戸三宮にある【チキンジョージ】というライブハウスに私はよく足を運ぶ。広過ぎない空間で、アーティストとの距離を密接に感じられる。クラシック以外の音楽も好んで聴き、ライブにも訪れる。クラシック音楽家とて、「クラシック音楽しか演奏しません、出来ません」ではなんだか寂しい。だって研鑽を積んだ演奏のエキスパートですよ、クラシック音楽奏者は。将来プロの演奏家を目指す音大生は、膨大な時間を練習に費やす。それは休むことなく365日。毎日練習を積み重ねることで、少しずつではあるが確実に上達していくことを体感し、それを喜びとする。しかし練習を怠れば、みるみるうちに衰退。芸術は勝ち負けではないが、大学の実技試験に評価が下る点では、優劣が気になる。遊びたい。でも遊んでいる場合ではないというジレンマに苦しむ。ただただ上手くなりたい。一途な想いが怠慢な心に喝を入れる。そんな厳しい環境下でプロの演奏家は生まれる。プロになっても精進は一生続く。飽くなき練習。変わらぬ音楽への情熱。演奏家はその一音に魂を込める。私の専攻楽器であるフルートのように、呼吸から音を作る管楽器奏者はフィジカル面もハード。体幹を鍛えないと安定した美しい音色は出せない。正確な音程、豊かなヴィブラートと表現力。秀美な演奏であることへの必須条件を獲得第9回(音楽の力)(音楽の力)(音楽の力)(音楽の力)(音楽の力)Powerofmusic上松明代(フルート奏者・作曲家)武蔵野音楽大学卒業。在学中にハンガリーの「音楽」と「民族」に魅了され、卒業後ハンガリー国立リスト音楽院へ留学。31歳で知的好奇心から兵庫教育大学大学院で作曲を学ぶ。演奏活動と同時にバイタリティー溢れる作曲活動も展開中。六甲在住。You Tubeにてオリジナル曲公開中。オフィシャルサイト http://akiyouematsu.comするのに凄まじい努力を要する。プロのソリストになると直面する悩みは、「自分の演奏したい曲とウケる曲」とのジレンマ。聴衆を喜ばせたい想いと、大衆向きではないが、素晴らしい楽曲を紹介したい想いとの狭間で揺れる。しかし、究極はやはり、目の前にいるお客さんに音楽を楽しんで貰いたいということ。だからそれを第一に考えプログラムを組む。決して聴衆に媚びているわけではない。喜んで頂けてこそプロの演奏家ではないだろうか。何はともあれ、芸の道は険しい。悩みも尽きない。しかし喜びも一入。それが救いだ。43

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