KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2016年9月号
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兵庫県医師会医政研究委員いけがみクリニック 院長池上 修生 先生費用対効果評価の問題点─費用対効果評価とはどのようなものなのでしょう。池上 一般的には、ある物事をおこなったときにさしかかった経費とその成果の関係を統計的に評価することですが、医療の場合は、ある患者さんの病気を治療したときにかかった治療費と患者さんの治癒度合との関係が、費用対効果評価となります。つまり、患者さんが病気を治療するのに要した費用が他の治療に比べて安い場合、その治療法は他の治療法に比べて経済的に優れている、つまり費用対効果にすぐれている治療法という評価になります。─費用対効果評価はどこで用いられていますか。池上 保険収載の判断や診療報酬の改定などをおこなう中央社会保険医療協議会 (中医協)に費用対効果評価専門部会を設け、そこで本年度より試験的に導入されています。─費用対効果評価の導入にはどのような背景がありますか。池上 まず挙げられるのが、医療の高度化、先進化にともなう高額な医薬品や治療法の登場です。わが国の医療費は2003年から2013年までの10年間で約10兆円増加しており、保険料や国庫負担でまかなっている有限な財源を、高額医療のみに投入することはできません。ですから、それらの高額な医療で患者さんが治ったのか、患者さんが満足しているのかや生活の質(QOL)も含めて、治療費に見合っただけの結果が出ているのかを検証する必要が出てきたのです。逆に現行の治療法でも、安価なのに効果が高兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第六十四回40
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