KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2016年8月号
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高齢者の食べる楽しみについて考えたい。 私は垂水区で有料老人ホームの運営にも携わっているが、実は屋上でミツバチを飼っている。そのハチミツを一口食べると派手な味ではないが、子どものころに食べたあの何とも言えない甘さと独特の風味が蘇って来る。ハチミツは入居者のために作っており、朝食やおやつに利用しているのだが、ターミナルになって食事を受け付けなくなった人が温かいハチミツ水だけは飲んでくれたことは、感慨深いものがあった。 さて私がなぜミツバチを飼いだしたか?それはある雑誌で銀座のミツバチについての記事を読んだのがきっかけである。有料老人ホームの朝食のパンに付けて食べてもらいたいと思った。 しかしどうして良いのか分らない。妻は猛反対で「入居者さんが刺されたらどうするの?買った方が安いわよ」とくる。当時NHKの朝ドラで「ゲゲゲの女房」が放映され、そのお兄さんが養蜂をしていてミツバチのことを話し出すと止まらないということを聞いた。 さっそくミツバチ談義を聞きに行く事となった。安来市は神戸から約3時間、アポなしで訪ねたがミツバチのことを詳しく教えていただいた。紹介してくれた養蜂家はなんと神戸の阪神御影にある俵養蜂所であった。俵養蜂所の社長は全国でミツバチの病気を診れるたった3人の獣医のひとりであった。 ミツバチをなぜ獣医がと思ったが、ミツバチは家畜であるため獣医が診るとのことであった。感染症やダニなどの寄生虫が主な疾患である。 さてミツバチの巣箱には約3万匹のミツバチがいる。そのなかで女王は1匹、働き蜂は約2万8千匹、オス蜂は約2千匹であり、女王蜂を中心としたひとつのファミリーである。連載 ミツバチの話 ①ハチミツと食べる楽しみ藤井内科クリニック 藤井 芳夫48
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