KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2016年8月号
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27万円を費やし、55日間現地で泊まって製作し、それが一番の賞を取ったので今度は自分の城をつくろうという気持ちになりました。27万円というのは今の300万円くらいの価値があったのではないでしょうか。しかも、自腹ですからね。中途半端な気持ちではないですよ。実は独立資金だったので、独立時は全然なしでした。─武者修行の思い出は。比屋根 3年間、東京の一流店の一番厳しいところに行きました。1日3時間しか寝られなかったですね。それ以外は働いている訳ですから、3ヶ月で1年分のことが吸収できます。そして厳しいところには必ず愛情があります。給料をもらいませんでしたから、家は大変でしたよ。それを家内が辛抱してくれました。─寝食を惜しんでまで洋菓子を極めたいという思いは、どこから来るのですか。比屋根 やはり差別から来るものもあったのではないでしょうかね。僕が来た頃、沖縄は完全な外国でしたから。「内地の人には負けないぞ」という思いはあったのかもしれません。─独立後も大変なことがあったのではないでしょうか。比屋根 いよいよ会社が危機という時期もありました。家内と息子と娘の前で、「僕の経営手腕がないばかりに迷惑をかけて悪い。君らは君らでしっかりやっていけ」とまで言いましたよ。僕は「大過なく」という言葉が大嫌い。「大過なく」ということは何もしていないのと一緒です。いろいろあるからこそ成長するんですよ。エーデルワイスの職人30名が力を合わせて1ヶ月かけて作り上げた大作、ピエスモンテ「ロイヤルウェディング」50分の1サイズの大型帆船「日本丸」を、砂糖と卵白で再現。全て食べられる素材できている30

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