KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2016年8月号
18/56

先生はおっしゃいます。 桂先生が私の『お家さん』を読んでくださっていて、ご自身の小説を書くなら玉岡さんに、とおっしゃってくださったのですが、これで小説が書けると思いますか(笑)。 実際、もっといっぱいご苦労はあったと思うんです。会社が潰れたとか、好きな人と結婚できなかったとか、そういうのはなかったんですか!と申し上げたのですが、「全然なかった」とおっしゃる。 桂先生は、40歳を過ぎてからご結婚されました。婿養子として先生の会社を手伝いますというお話はたくさん来たそうなんですが、桂先生は「自身が知らない世界を教えてくださる方が良い」と思われた。そこで、当時の大蔵省の官僚の方とご結婚されたんです。ご主人は60歳の定年を過ぎてから、若い方にまじって司法試験を受けられて受かったというユニークな方でした。ご主人のお話といえばおっしゃったのは、お見合いのときに桂先生が着物を着ていかれたら、ご主人から「君はファッションデザイナーなんだから着物はもう着ない方がいいよ」と言われたと(笑)。じゃあってことでご主人のアドバイスで、今ではトレードマークになっているあのターバンのお洋服だったそうです。先生はご主人が亡くなられたときのことも一切お話しにならなかった。いい思い出はお話しになるけれど、悲しいことはおっしゃらない。そこで思ったのは、桂先生は他にはない、前人未到のポジティブシンキングの方なんじゃないかと思うんです。ダブルヒロインは桂由美と、昭和の女性たち そんな順風満帆の桂先生の半生を描くなら、桂先生ともう一人、架空の女性を登場させてダブルヒロインの小説にしよう、と考えました。桂先生が“ウエディングドレスの頂点”の人なら、もう一方の女性は和装の“打掛けの頂点”の人でしょう。それと、何千、何万という昭和の女性がモデルです。 そしてそのモデルの中には、私自身の母親も含まれています。「ブラインカフェ」のお料理を楽しむ参加者たち会場となった北野坂にある「ブラインカフェ」18

元のページ 

page 18

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です