KOBECCO(月刊 神戸っ子) 1961年9月号
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ボーイフレンド/早瀬圭4912-002型ガス魚焼器1,500円お見合いをして、銀行員である現在の夫と結婚が決った時、敬子は、何のためらいもなく、関根裕にその事を報告した.裕は、敬子の高校時代のクラスメートであり唯一のボーイフレンドであった。その時、彼は、京都の大学の英文科四年で、ジャーナリスト志望の朗らかな青年であった.裕は、その〃報告〃を聞いて、へえ、よく貰い手があったもんだなあ、と云い乍らも、素直に喜んでくれた。敬子は、他の誰れに喜んでもらうよりも、裕に祝福された事の方がうれしかった。それから一ケ月程たった十月のある日、lいろいろ考えたんだけどネ、お敬は食いしん坊だろう、だからこれが一番いいと思って……。これ、ぼくからの結婚祝いだ。そう云って、裕は、ガス自動炊飯器の包承を敬子の部屋へ無造作においた。そして、ポケットからしわくちやのハンカチを出しててれかくしのようにおでこをさっとふいた。lほんとは、お敬が好きだったんだ:・・敬子は、はっとして裕をぶた・lバカ、うぬぼれるな、冗談だよ。それより、いいお嫁さんになれよ。裕は、いたずらっぽく敬子をゑて、じや、と云い、敬子の返事も聞かずにさっさと帰っていった。松蔭短大時代の友人たちが、おアッイお二人におアッイ贈物を、コント←33-007型ガス湯沸器9.300円10力払9,800円といってガス湯沸器を持ってきてくれた。敬子はどうもガス器具と縁があるようネ、そんな冗談を云い乍、姉夫婦はガスレンヂを贈ってくれた。あなたのあまり上手でないお料理の腕をカバーさすために、姉はそんな但し書までつけてくれていたI。やがて、結婚して三ヶ月になる。敬子は、最近ようやく奥様ぶりが板についてきたように向分で思う。台所は、結婚の時にいろんな人から贈られたガス器具でいっぱいである。どの器具にも、それを贈ってくれた人の思い出がこもっていて、敬子は楽しい。でもやっぱり一番印象に残っているのは、関根裕のことである。彼は、今春、大学を卒業して、希望通りM新聞社に入社したと聞いているその時以来、敬子は、夫を説きふせ、A新聞をやめて、M新聞をとるようにした。理由が分らず不思議がる夫をゑて、敬子は、明るく笑った。そして、いつか、もっと先で、善良で典型的な銀行員タイプの夫と、M新聞の第一線記者として活躍しているであろう裕と三人で談笑し合える日があればどんなに楽しいだろうなどと想像し乍ら、皿をふく手を動かしていた。13-005型自動点火式ガスレンヂ12,500円10カ月払13,100円2リットル炊間接式、自動点火式ガス自動炊飯器4,600円10カ月払4,800円

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