KOBECCO(月刊 神戸っ子) 1961年8月号
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夜の七時頃。ようやく客のたちこめるしおどきを見はからったかのように、マダムのヨサノ・ヒロコさんは、入口のドアをさっと押しひらいて、その腕姿を現わす。含差をふくんだ彼女の眼差しはまことに魅惑的だ.美しいマダムにほぼえ承かけられた時は、さながら夢の国を訪れた錯覚におそわれた…という甘い文章を読んだことがあるが、そう言いたいほど「なぎさ」のママの眼は憧れをおびて美しい。それぞれのテーブルの客にさりげない微笑をなげかけては、いつとなく話題の中に入ってくるホステスぶりもまた見事である。映画「女が階段を上るとき」のヒロイン、高峰秀子の姿態をふと心に思い浮べたが、彼女はもっと柔眉な感じだ。十人近くいる女の子もママの薫陶をうけてか、がさつな子は一人もいない。ビール一本も飲まぬうちに、こちらが退屈してしまう女の子の多いバーがおおよそだが、だまって飲んでいてもなんとなく心に愉しさが湧いてくるようなデリカシーをここの女の子はもっている。そしてハイボール一杯の客も大切にあつかってくれるのはいい。客筋はロータリァンクラスの各界の大物が多い。店内もまたそれにふさわしく、装飾、調度品、照明など、デザインの一つ一つが落ついたハーモニーを保って、憩の場にふさわしい豊かなムードをかもしだしている。一流の雰囲気だ場所は生田新道の西から初めての小路を北へ入り、突当りをちょっと右折し、さらに山手へしばらく行った角にある。(K)9マダムコンバンヮCULBNAGISAなぎさ1211
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