KOBECCO(月刊 神戸っ子) 1961年7月号
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「そいつが応えたのか」「相当まいっていた後だったからな・それにしても、目撃者は多勢いたはずなんだがな」「アーさん、浜の人間は証言はしないぜ。後が怖いからな・然しアーさんの話は何処からでたんだい」「隆からなんだ。奴が吉田の手配師だとつきとめた日にな」「じあ証言にはならねえな。奴さん警察でも同じことを云ってるし、奴こさんの顔付けで栄組に入っている指命アンコが確かに昆棒で撲ったのを見たと云っている」私は暗い気持だった。おそらく仲間の記者がいうように検数協会のターリマンも、労務者も、隆の他に数人が踏んだり蹴ったりした事は口外するまい。とすれば結果は隆一人にしぼられてしまう。「共犯の線では行けないだろうな」「先ず無理だろう。かんじんの死体が灰じあね」私はK紙の論調が手配師制度の存在を鋭く突いていることも、隆に不利になっていると思った。「アーさんは、隆個人にはひどく同情的だが、ちつと加害者心裡じあないか。老練の刑事が強殺犯の寝込を襲って引張る時に、そいつの家庭に子供なんかが居たりすると、当分、刑事稼業がいやになるそうだ。第一、手配師というのは違法なんだろう」「うん、K紙もそれを追求しているが、それは全港湾労組の線だ。全港湾では力説していた.理由はある.指命アンコ、直行アンコの常雇化を組合の理想にしているからな・が実際問題として、本家仲間、分家仲間といわれるにこの二次、三次下請会社の常一雇者と、アンコでは一諸にならないことも知っている。荷役能力は雲泥の差だし労働に関する考え方も本家仲間、分家仲間は真剣だ。俺は今度の事件で波止場を歩いて承てはじめて判ったのだが常雇とアンコは一眼で区別がつくんだ」「すると、アーさんは今後どの線で行くんだ.やはり暴力の温床となっている港湾荷役会社の特別事情、つまり大会社ほど危険分散を口実にして常雇をへらしているこの面を叩くのか」「結局そうなるな。事件は一応、社会部に渡すよ。俺は本来の海運記者に戻るさ。そして港湾荷役機構そのものを叩く。さもなければ汚物を放っておいて、蝿を追うようなもんだからな」「相変らずアーさんらしい行きかただよ。それにしても局長賞おめでとう。今晩オゴレよ」「全くだ、海運記者に社会部がいかれたようなもんだからな」仲間は喜んでくれた。私も仲間の祝福を素直に受け取っQき》。..』・Q49
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